第18回日中韓(CJK)標準化IT会合報告
1.はじめに
2024年7月8日(月)から7月10日(水)まで中国の敦煌において、第18回CJK標準化IT会合(CJK-18)が開催されました。CJK標準化IT会合は、日本(ARIB、TTC)、中国(CCSA)、韓国(TTA)の4つの標準化団体が一堂に集まり、共通に関心の高い技術分野に関する標準化活動について情報交換を行う場です。CJK標準化IT会合 の組織は図1のとおりです。

今回のCJK標準化IT会合のPlenary会合は、前回(第17回)会合を2018年10月に松江で開催後、コロナ禍のためしばらく延期となっており、約6年ぶりの開催となりました。ホストのCCSAからはMIIT2名含む21名、韓国のTTAからは6名、日本のARIBからは3名、TTCからは岩田、新村茂樹国際担当部長の2名、合計32名が参加しました。

2.概要
表1の会合スケジュールのとおり、8日(月)にHoD(Head of Delegation)の夕食会が開催された後、9日(火)には各SDO(Standardization Developing Organization)からのキャパシティビルディングの活動も含めた活動の紹介、戦略セッションでのAIをテーマに各SDOの活動についての紹介、前回第17回会合以降に行われた各WGの報告等がありました。10日(水)にはテクニカルビジットを実施しました。
表1 第18回CJK標準化IT会合スケジュール
| Date | Time | Subject | Speaker | Org. | |
|---|---|---|---|---|---|
| 8 July (Mon) | 18:00-20:00 | HoD Dinner | |||
| 9 July (Tue) | 09:00-09:30 | Welcome and Opening Remarks | Opening | Chair: WANG, Zhiqin | CCSA | 
| Welcome Remarks | WEN, Ku | CCSA | |||
| LU, Yang | MIIT | ||||
| HoDs Addresses | NISHIOKA, Seiji | ARIB | |||
| Son, Seung-hyun  | TTA | ||||
| IWATA, Hideyuki | TTC | ||||
| Participants Information | Chair: WANG, Zhiqin | CCSA | |||
| Approval of Agenda | Chair: WANG, Zhiqin | CCSA | |||
| Approval of draft minutes of CJK-17 Meeting | Report and approval | KUMAGAI,Yoshiaki  | ARIB | ||
| 09:30-10:30 | SDO Presentations | ARIB | KAWACHI, Tatsuya  | ARIB | |
| CCSA | ZHAO, Shizhuo | CCSA | |||
| TTA | KIM, DAE JUNG | TTA | |||
| TTC | IWATA, Hideyuki  | TTC | |||
| 10:30-11:00 | Coffee Break & Group Photo | ||||
| 11:00-12:30 | Strategic Session (topic: AI) | How AI is treated in Beyond 5G White Paper of B5G Promotion Consortium | NISHIOKA, Seiji | ARIB | |
| AI development in China & Related standardization activities | WANG,Yuntao | CCSA | |||
| Safe and Trustworthy AI | Shin, Junho | TTA | |||
| Overview of the TTC Working Group on AI | NIIMURA, Shigeki  | TTC | |||
| Discussion |  |  | |||
| 12:30-14:00 | Lunch | ||||
| 14:00-15:30 | Report from WGs since CJK-17 | IMT WG | XU, Xiaoyan | CCSA | |
| IS WG | MENG, Nan  | CCSA | |||
| WPT WG | WANG, Zhiwei  | CCSA | |||
| NSA WG | SHI, Rong | CCSA | |||
| TACT WG | ZHAO, Shizhuo  | CCSA | |||
| ITS Adhoc Group | GE, Yuming  | CCSA | |||
| 15:30-16:00 | Coffee Break / Meeting Minutes Preparation | ||||
| 16:00-16:30 | Next Meeting (CJK-19)–host and schedule etc. | TBD | TTA | ||
| AOB |  | CCSA | |||
| Draft CJK-18 Plenary Meeting Minutes Report | QI, Xu | CCSA | |||
| Closing Remarks | NISHIOKA, Seiji | ARIB | |||
| Son, Seung-hyun  | TTA | ||||
| IWATA, Hideyuki | TTC | ||||
| DAI, Xiaohui | CCSA | ||||
| Closing | Chair: WANG, Zhiqin | CCSA | |||
| 17:00-18:00 | Buffet Dinner | ||||
| 10 July (Wed) | 8:00-12:30 | Technical Tour | |||
| 12:30-14:00 | Lunch | ||||
3.歓迎挨拶および各HoD挨拶
主催者であるCCSAを代表しWen Ku会長・代表理事から歓迎の挨拶があり、この会議が技術やビジネスの課題に対する深い議論と交流を行う機会であることを望むというコメントがありました。また中国政府を代表してLu Yang氏(MIIT :Ministry of Industry and Information Technology of the People’s Republic of China)より歓迎の挨拶がありました。各団体のHoD(ARIB西岡誠治理事、TTA Son Seung-hyun理事長、TTC岩田)より挨拶を行いました。3者からは、パンデミック後の初めての会合であるため、対面の会合ができてうれしいとのコメントがありました。
4.各SDO報告(キャパシティビルディングの取り組みを含む)
4.1 ARIB
ARIB 河内達哉参与より、ARIBの活動内容について説明がありました。2023年のメンバー数が188(前年比-4)となっていること、ARIBの活動内容として、研究/開発(R&D)、標準化、無線産業の振興、電波利用に関する相談、次世代標準の専門家の育成、SDOとの協力があることが紹介されました。標準化については、重要テーマとして、Beyond 5G/6G、UHDTV(4K/8Kのテクノロジ)、ITSを3つの柱としているとの説明の後、それぞれについて概要説明がありました。
4.2 CCSA
CCSA Zhao Shizhuo部長より、CCSAの活動内容について次のとおり説明がありました。CCSAは2022年に創立20周年を迎え、メンバー数が初めて1000を超えました。2023年のメンバー数は1225(前年比+163)であり、その内訳は、Manufacturerが一番多く38%を占めています。2023年のCCSAの主要な活動は中国のMIIT、MOST、NEA、SACが共同で発行した新産業標準化パイロットプロジェクトの実施計画(2023〜2035年)であり、2023年の標準制定数は、国内標準:12、工業標準:589、CCSA標準:65となりました。
また、CCSAの11のHotエリアのうち、以下の4つのエリアに焦点を当てた活動内容の紹介がありました。
- 5G/5G-Advanced,6G
- IPv6
- Quantum Communication
- Intelligent connected vehicles
4.3 TTA
TTA Kim Daejung副理事より、TTAの活動内容について説明がありました。組織変更があり、6G標準化専用Lab、AI Trustworthinessセンター、国際標準化コラボセンターなどを新設したこと、標準化活動の戦略として、グローバル標準化能力強化、標準のデジタル化、国際協力の拡大の3つがあることが紹介されました。
また、Capacity Buildingの活動について紹介があり、3つのレベル(Initiate、General、Master)に分けてステップごとに教育・トレーニングのプログラムを設定しているとの説明がありました。
4.4 TTC
岩田より、TTCの活動内容について説明を行いました。現在の正会員数(Regular)は75となっており、約半分が通信機器メーカーとなっていること、oneM2M専門委員会を廃止してIOWN GF専門委員会を新設したことを紹介し、企業内の標準化人材に関する状況及びCapacity Building Framework for Standardizationについて説明を行いました。
5.Strategic Session (Topic: AI)
5.1 ARIB
ARIB 西岡誠治理事より、“How AI is treated in Beyond 5G White Paper (ver.3.0) of B5G Promotion Consortium”と題し、B5G Promotion Consortiumが発行したWhite paper ver.3.0におけるAIの扱いについて、本コンソーシアムの背景、XGMFの設立、Ver.3.0までの道筋、White Paperの構成、B5Gで要求されるCapabilityやKPI、利用シーンなどの紹介がありました。
5.2 CCSA
CCSA Wang Yuntao氏より、“AI development in China & Related standardization activities”と題し、中国におけるAI開発の状況や利用ケース、AI標準化についての考え、CCSA TCI及びSG16におけるAI標準化開発のブリーフィングなど、中国におけるAI開発と関連する標準化活動が紹介されました。2023年の中国におけるAI関連企業は4,482に達しているとのことでした。
5.3 TTA
TTA Shin Junho氏より、“Safe and Trustworthy AI”と題し、EU、OECD、NISTにおける信頼できるAIの背景、韓国のAI倫理に関する国家ガイドライン、AIの信頼性と安全性に関する定義、信頼できるAIに関するTTAの取り組みについて紹介がありました。TTAでは2023年より7つのカテゴリー毎に信頼できるAI開発のためのガイドブックを発行しており、また、2024年よりCAT(Certification of AI Trustworthiness for AI models and systems)というAIに関する認証プログラムをスタートさせたとのことです。
5.4 TTC
TTC 新村茂樹国際担当部長より、“Overview of the TTC Working Group on AI”と題し、TTCのAIに関した活動として、AI活用専門委員会の紹介と2つのテクニカルレポート(TR-1091/1099)についての説明を行いました。
6.CJK-17以降の各WG活動報告
6.1 IMT WG (International Mobile Telecommunication)
CAICT Xu Xiaoyan氏よりCJK-17(2018年10月)以降のIMT WGの活動及び将来の計画について報告がありました。CJK-17以降、年3回計16回実施し、内COVID-19期間中はe-meetingであったものの、今年5月のWG#70よりF2Fミーティングとなっています。配下に3つのSIG(Special Interest Group)があり、そのうちSIG-TPR(技術パフォーマンス要件に関する情報共有)とSIG-Eval method(評価方法に関する情報共有)がWG#70で新設されました。
6.2 IS WG(Information Security)
CCSA Meng Nan氏よりCJK IS WGの概要とCJK-17以降の会合及び将来の計画について報告がありました。本WGはセキュリティに関する情報共有・意見交換を行うWGとして2012年に発足しました。CJK-17以降はWG#16、#17を開催しています。その後COVID-19によりしばらく開催されていませんでしたが、今年4月にWG#18が韓国の済州島で行われました。主なトピックはAI、ITS、 Blockchain、Biometrics等の情報共有、WTSA-2024準備状況の共有などQ13/SG17へのITSセキュリティに関するcontributionや、Q14/SG17へのBlockchain/DLTセキュリティに関するcontributionなどです。
6.3 WPT WG (Wireless Power Transmission)
CAICT Wang Zhiwei氏より、CJK WPT WGの概要、CJK-17以降の会合状況、今後の計画に関して報告がありました。前回CJK-17以降、WGP WG#17、#18、#19の3回会合を行いました。
6.4 NSA WG (Network Service Architecture)
CAICT Shi Rong氏より、CJK-17以降のNSA WGについて報告がありました。COVID-19によりCJK-17以降のNSA-WG活動はありませんが、CJK関係者はITU-T SG13及びSG20で幅広い協力を行い多くの成果を上げています。(QKDN、クラウドコンピューティング等)
WGの範囲が広すぎるので絞った方がいいとの意見があり、絞り込むためのコンセンサスを得ることで合意しました。詳細は今後の会議で、CJKのNSA WGの議長間で議論される予定です。
6.5 TACT WG(Group on Administrative Matters)
CCSA Zhao Shizhuo氏より、WGのToRについて説明がありました。今後の計画としては、必要であればCJKガイドラインをアップデートする予定です。
6.6 ITS Ad Hoc Group
CAICT GE Yuming氏より、ITS Ad Hoc Groupの状況説明がありました。今後の案として3つの案が提示され、どの案にするかについて議論されました。
- Option1: ITS-WGを設立する
- Option2: ITS-WGを設立する(但しCJKレベルでのワークショップ開催に特化)
- Option3: ITS-WGを作らず現行のSIG-V2X配下のままとする
議論の結果、Option2で進めることで合意されました。現状どおりアドホックグループのままとし、詳細ToRを検討します。
7.閉会の挨拶
ARIB 西岡誠治理事、TTA Son Seung-hyun理事長、TTC 岩田、CCSA Dai Xiaohui副理事から、ホストと参加者に対してそれぞれ感謝の意を表明しました。最後に議長のWang Zhiqin氏から参加者へ感謝の意を表し、会議が終了しました。
8.次回のCJK-19会合
次回ホストのTTA Kim Daejung氏よりCJK-19について提案がありました。開催時期は2025年10月または11月とし、場所は検討中とのことです。
