第37回ASTAP会合
1.はじめに
2025年4月21日から4月25日まで、タイのバンコクで第37回ASTAP会合がハイブリッド形式(プレナリ会合のみオンライン形式)で開催されました。19ヵ国のAPT会員、賛助会員、ITUなどから137名(うち現地参加者102名)が参加しました。日本からは、総務省通信規格課の澤田和幸課長補佐を団長とし、15名(総務省2名、NEC3名、NICT5名、NTT1名、OKI1名、TTC3名)が現地参加しました。また、ASTAPに先立ち21日に開催されたインダストリーワークショップには、リモート参加で4名(NTT、楽天モバイル、日立、クラスタ/筑波大学)に参加いただきました。

2.インダストリーワークショップ
インダストリーワークショップは、AIとメタバースをテーマに、日本、韓国、中国から14名を講演者に招いて開催されました。インダストリーワークショップの企画はASTAP副議長が担っていますが、今回は Xiaoya You氏(中国)が主担当を務めました。午前は、AIをテーマに、AI技術とその標準化、AIの産業と活用の2つのセッションをSeungyun Lee博士(韓国)をモデレータとして実施しました。中国から4件、韓国から3件のほか、日本からLeon Wong様(楽天モバイル)と長尾慈郎様(NTT)に講演いただきました。午後のセッションでは、メタバースについて、山本秀樹様(OKI)をモデレータとして、中国から2件、韓国から1件のほか、日本から平木剛史様(クラスタ/筑波大学)と新倉雄大様(日立)に講演いただきました。ワークショップの総括においては、You氏から、今回のワークショップの講演者は日中韓のみであり、日中韓以外のAPT地域の国からの講演者の招聘が課題として示されました。お忙しい中、モデレータを務めていただいた山本様、ご講演いただいたWong様、長尾様、平木様、新倉様に御礼申し上げます。
表1 AIとメタバースに関するインダストリーワークショップ
Introductory Remarks
by Mr. Xiaoyu YOU
ASTAP Vice-Chair/Industry Workshop Committee Member |
Session 1: AI
Moderator: Dr.Seungyun LEE
(Vice-Chair of EG-IOT, ETRI, Republic of Korea) Session 1-1: Technology and Standardization of AI
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Coffee Break
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Session 1-2: Development of industry and application of AI
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Lunch Break
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Session 2: Metaverse
Moderator: Dr. Hideki Yamamoto
Chair, EG MA, Oki Electric Industry Co., Ltd., Japan
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Conclusion of Industry Workshop
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3. 第37回ASTAP会合概要
3.1 プレナリ
プレナリでは、日本からEG BSG副議長に角方重明(TTC)が就任することが承認されました。また、今回欠席の議長の代理が承認されました。アドバイザリーグループの報告では、次回のインダストリーワークショップの主担当に、ASTAP副議長の小生が、議長であるHyoung Jun Kim博士(韓国)から指名されました。
3.2 ASTAPの将来の方向性検討タスクフォース(FD-TF)
前回会合で設置された検討WGの1年間の検討結果について報告がありました。WG1およびWG2に関する質問状の結果報告および各WGからの勧告(作業方法、再編)について、以下にあるとおり議論を行いました。
なお、小生担当のWG3(インダストリエンゲージメントと連携ツール)については、APTメンバ以外の産業界の意向を確認するための質問状をAPT地域内のSDOや関連機関に照会することが承認されました。質問状はAPT事務局より配布される予定です。
3.2.1 WG1(作業方法)
作業方法に関する以下の4項目の改定案が検討され、承認されました。
1)ASTAPアドバイザリーグループの廃止
アドバイザリーグループについては、廃止し運営委員会に統合することが承認されました。
2)必要に応じたTGの追加
タスクグループ(TG)の活動期間を2年とし、ASTAP会合での承認で1年延長可能とすることが承認されました。
3)WG議長および副議長の任期
WG議長および副議長の任期を3年とし、2度再任できることが承認されました。
4)ASTAP提案文書の締め切り
ASTAPへの提案文書の締め切りを、現行の「少なくとも1週間」から「10暦日」に変更するという日本からの提案が承認されました。
ASTAP議長は、上記の作業方法の改定を、第49回APT運営委員会(MC-49)に提案することとなりました。
3.2.2 WG2(組織再編)
組織再編のFD-TF提案については、本会合での合意は得られませんでした。FD-TFは終了し、2026年の第38回ASTAP会合に向け、ASTAP議長をリーダーとする将来に向けたマネージメントチーム(MT-FD)を4回開催して引き続き検討することとなりました。また、MT-FDのToR(役割、メンバ、活動ツール、線表、期待される成果)が議論され、了承されました。ToRの策定に尽力された永沼美保様(NEC)に御礼申し上げます。APT事務局から、ToRにおける招待メンバの定義の明確化が求められ、「APTメンバによって指名され、APT事務局長との協議の上、ASTAP議長が承認」することをToRに追記しました。
3.3 ワーキンググループ(WG)の概要
3.3.1 政策と戦略調整のWG(WG PSC)
議長欠席のため、PSC副議長であるWu Tong氏(中国)が代理議長を務めました。WG PSC配下の4つのエキスパートグループ(EG)【BSG、PRS、ITU-T、GICT&EMF】からの15件の入力文書、5件の情報文書、3件のインダストリーワークショップの文書をレビュー・審議しました。また、WG PSCは、WG PSCの作業計画の改訂、EG BSG、EG ITU-T、EG PRSのToRの改訂し、ITU-T SG3RG-AOへの回答連絡書の作成、本会議の検討と承認のための質問表の作成を行いました。さらに、EG GICT&EMFの新副議長にDr.Bum Sung Kim(韓国)が任命されたこと、EG BSGの新副議長に角方重明(TTC(日本))、EG PRSの新議長にMr.Hongki Cha(韓国)が任命されたことが報告されました。
表2 WG PSC 成果文書
1. | EG ITU-Tの改訂ToR |
2. | EG BSGの改訂ToR |
3. | EG PRSの改訂ToR |
4. | ITU-T SG3RG-AOへの返信連絡声明(文書:ASTAP-37/OUT-16) |
5. | アジア太平洋地域におけるグリーンデータセンターの実践と気候レジリエンスに関するアンケート(文書:ASTAP-37/OUT-17) |
3.3.2 ネットワークとシステムワーキンググループ(WG NS)
WG NSの議長であるLee Joon-Won博士が報告を行いました。WG NSの下にある3つのEG【FN&NGN, DRMRS, SACS】が17件の入力文書と2件の情報文書をレビュー・審議したことが報告されました。WG NSは、WG NSの作業計画の改訂、EG DRMRSのToRの改訂、ITU-T SG13とITU-D SG1への2つの連絡文書と、本会議の審議と承認のための3つのAPT報告書の作成を行いました。また、Dr.Ukrit Mankong(タイ)がEG SACSの新しい副議長に任命されたことが報告されました。
表3 WG NS成果文書
1. | EG DRMRSの改訂ToR |
2. | ITU-T SG13への回答文書 |
3. | ITU-D Study Group 1 Question3/1への回答文書 |
4. | APTアジア太平洋地域における6G以降の将来のネットワークサービスに関する報告書 |
5. | APT Local-area Resilient Information Sharing and Communication Systemsに関する報告書 |
6. | APT Small-Cell Access Networkのためのカスケード自由空間光・ミリ波通信システムに関する報告書 |
3.3.3 サービスとアプリケーションワーキンググループ(WG SA)
WG SAの議長である永沼美保様(NEC)が報告を行いました。永沼様は、WG SAの配下の4つのEG【IoT、IS, MA, AU】が23件の入力文書をレビュー・審議したことを報告しました。WG SAは、WG SAの作業計画の改訂、EG IoT、EG IS、EG MA、EG AUのToRの改訂、ITU-T SG21への連絡声明1件、アンケート2件、APT報告書3件の作成を行い、本会議の審議と承認を求めました。また、Dr.Seung-Yun Lee(韓国) がWG SAの新しい副議長に、Mr.Daniel Hark Sohn(韓国) がEG AUの新しい副議長に任命されたことも報告されました。
表4 WG SAの成果文書
1. | EG IOTの改訂ToR |
2. | EG ISの改訂ToR |
3. | EG MAの改訂ToR |
4. | EG AUの改訂ToR |
5. | アジア太平洋地域におけるジェネレーティブAIの活用事例に関するアンケート |
6. | データ共有の技術的課題とその環境に関するアンケート |
7. | ITU-T SG21へのリエゾンステートメント |
8. | IoTセキュリティガイドライン (管理者用) |
9. | APT各国のアクセシブルな緊急通信のための中継サービスの現状に関するAPTレポート |
10. | COVID-19のアジア太平洋地域におけるCDNサービスの問題と要件に関するAPTレポート |
4.今後の予定
次回第38回ASTAP会合は、2026年4月下旬の開催が予定されています(開催場所は未定)。ASTAP議長および副議長は、任期満了に伴い、次回会合で新たに選任される予定です。