TTCセミナー「Safe Listening 2 : ずっといい音を聴いていたい ~ 難聴予防のWHO決議と音に関する最新ICT技術動向」開催報告
WHO(世界保健機構)によれば、世界で11億人もの若者が聴覚障害を引き起こす危険性があると言われています。スマートフォンなどポータブル音楽プレーヤの発展途上国を含めた世界的な普及に伴い、イヤホン、ヘッドホンを通した音楽視聴により、若年層の難聴者の急速な増加が深刻になっています。日本でも昨年「イヤホンガンガン伝言ゲーム」という遊びが中高生を中心に流行しましたが、難聴を引き起こすリスクが指摘され問題となりました。
一方で急速に進む高齢化社会とともに聴覚障害者数も増えており、日本では1430万人(人口の約11%)もの方が聴覚に異常がある、との統計もあります(2015年、日本補聴器工業会調べ)。
2017年5月に開催されたWHOの総会決議において、失聴・難聴の問題は、禁煙、生活習慣病、ガンなどとならんでWHOの重要項目として取組みが強化されることとなりました。耳と聴覚を守るための予防やケアが、誰にでも受けられる対応が世界中で必要とされています。
ITU(国際電気通信連合)では2016年から、WHOと協力してSafe Listeningに関する標準化作業を進めています。これに対応してTTCでは、マルチメディア応用専門委員会e-health SWGにおいて、KDDI, 慶應義塾大学などの提案で議論が進められ、ITU-T SG16での勧告化を推進してきました。
スマートフォンの普及とともに、ヘッドホンなどの音響機器も進化し、より良い音響環境や臨場感を得られる技術が開発されていますが、今後は安心安全な機器の開発が業界にとっても課題となります。例えば最新音響テクノロジの難聴予防への対応や、難聴予備軍の方への保護やサポートについて、議論や検討が期待されます。
今回が2回目の開催となった本セミナーでは、WHOのSafe Listeningに関する総会決議とその取組みについて、また医療従事者から難聴発症の適切な予防についてご紹介いただきました。さらに難聴予防の教育の必要性と啓蒙活動のご紹介、また新しい技術を活用した音響機器による難聴者支援など、安心安全や社会貢献に関る取組みも含めて、それぞれの専門家による解説とともに、ITU-Tでの標準化活動についてご紹介いたしました。
ご講演いただいた方々並びにご来場いただきました皆様、まことにありがとうございました。
開催スケジュール
| 開催日時 | 2017年12月15日(金)14:00~17:00 | 
|---|---|
| 開催場所 | 一般社団法人情報通信技術委員会(TTC) 2階 A・B会議室 東京都港区芝公園1-1-12 芝公園電気ビル【MAP】 | 
| 主 催 | 一般社団法人情報通信技術委員会(TTC) マルチメディア応用専門委員会 | 
| 協 力 | WHO健康開発総合研究センター セーフリスニング事務局 | 
| 参加者数 | 70名 | 
講演資料
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プログラム
司会:慶応義塾大学教授 川森 雅仁 氏
| 時刻 | 講演内容 | 講演者 | 
|---|---|---|
| 14:00~14:05 | 開会挨拶 | 総務省 国際戦略局通信規格課 国際情報分析官 戸田 公司 氏 | 
| 14:05~14:30 | Make Listening Safe ~ WHOの総会決議とSafe Listeningの取組み | WHO 健康開発総合研究センター  上級顧問官 野崎 慎仁郎 氏 | 
| 14:30~15:00 | 医者が勧める難聴対策 ~ 難聴予防のための適切な方法と対策 | 国際医療福祉大学病院 耳鼻咽喉科 部長 医学博士 中川 雅文 氏 | 
| 15:00~15:30 | Safe Listening ~ イヤホン・ヘッドホンで音楽を安全に楽しむために | 株式会社須山歯研 代表取締役 セーフリスニング事務局 須山 慶太 氏 | 
| 15:30~15:50 | 休憩 | |
| 15:50~16:20 | 難聴と認知症における音声コミュニケーションの重要性 〜 最新のコミュニケーション支援技術に触れる | ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社 代表取締役 中石 真一路 氏 | 
| 16:20~16:50 | マルチメディア技術を活用した安心安全への取組み ~ ITUにおける標準化と今後の取組み | 慶應義塾大学 教授 川森 雅仁 氏 | 
| 16:50~17:00 | 閉会挨拶 | TTC代表理事専務理事 前田 洋一 | 
| 17:00~ | 意見交換会 | |
セミナーの様子






