マエダブログ

マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

アクセシビリティを考慮した緊急通報システムの標準化に向けて

 

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 ITU-Tで、情報通信の観点から災害救援システムとネットワークの復元・回復能力の改善(耐災害性の向上)に関する標準化の初期検討を行うITU-TのFG-DR&NRR(Focus Group on Disaster Relief Systems, Network Resilience and Recovery)の第4回会合が、総務省とNICT(独立行政法人 情報通信研究機構)のホストにより、2月5日から8日まで、新宿京王プラザホテル(8日は仙台へのテクニカルツアー)にて開催されました。この会合の全体報告については、後日発行されるTTCレポート(2013年4月号)などの報告を参考にしていただきたいと思います。

  今回のマエダブログは、この会合において、TTCの「緊急通報アクセシビリティワーキングパーティ」Em-Call WP)からの提案を行ないましたので、その結果についての速報です。

  Em-Call WPは、消防や救急等の緊急通報システムにおいて、聴覚・言語機能に障がいを持った方々にも対応可能なアクセシビリティ(Accessibility:高齢者・障がい者を含む誰もが支障なく利用できるようにする課題)を考慮し、大規模災害時に適用できる緊急通報システムの検討を行なっています(総務省消防庁が主催する「消防防災科学技術推進制度」を利用しています)。更に、その成果を国際標準化の課題として提案することで、海外においても使用できるグローバルな緊急通報システムの実現を目指しています。

  災害救援システムの標準化課題を扱うFG-DR&NRR会合が日本で開催される機会を活用して、今回、TTCからEm-Call WPの検討紹介とその標準化課題の提案を行いました。寄書発表はEm-Call WPを代表して株式会社NTTデータだいちの塚本太志さんと株式会社NTTデータの中園和貴さんが対応されました。お二人にとって初めての標準化会議へのデビューとなりましたが、提案は多くの方の関心を集め、活発な意見交換が行われました。議論では、Em-Call WPのリーダー加納貞彦さん (TTC顧問、前早稲田大学教授、元ITU-T SG11議長)にもご支援をいただき、TTCの提案は、災害救援システムのケーススタディをまとめるFG-DR&NRRの成果物に反映することができました。

  TTCの提案は、聴覚・言語機能に障がいを持った方がスマートフォンを活用し音声以外の手段で通報を行うことができる新たな緊急通報システムであり、障がい者だけではなく、高齢者や国内外において、その国の言語によるコミュニケーションが困難な人の緊急通報にも有益であることが認識されました。

  また、ITUの関連組織で同様な検討が行われているかの情報を収集するために、ITU-Tにおける JCA-AHF(The joint coordination activity on accessibility and human factors)やFG-AVA(Focus Group on Audiovisual Media Accessibility)などアクセシビリティの専門家を通じて関連の情報提供を求めるリエゾン文書をFG-DR&NRRから送付することになりました。今後収集されるこれらの情報はTTCにおける災害救援システムの標準化検討にも役立つことから、今後のFG-DR&NRR会合の動向に注目していきたいと思います。

  下記は、今回寄書対応したTTC関係者(右から塚本さん、中園さん、加納さん)とFG-DR&NRR議長の荒木則幸さん、ITU-TでFG-DR&NRR担当事務局のカウンセラ太田宏さんとの記念写真です。

 TTCでは、ICT技術を活用した災害救援システムとネットワークの復元・回復能力の改善に関する標準化課題を重点項目の一つとして、今後の検討を加速していく予定です。また、障がい者だけではなく高齢者にも対応可能なアクセシビリティに着目した検討についても引き続き取り組んでいきたいと思います。次回のEm-Call WP第10回会合は2月20日に開催されますので、今回のFG-DR&NRR会合の詳細結果を含め本課題に関心のある方は委員登録いただき、ご参加いただければと思います。