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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

APT WTSA準備最終会合の結果速報

  ITU-TのWTSA(世界電気通信標準化総会)に向けたAPT(アジア・太平洋電気通信共同体)の準備会合(以下、「APT WTSA会合」と呼ぶ)の最終会合となる第4回会合が、11月16日から20日まで、オンライン会議で開催され、私は議長として参加しました。

  APT WTSA会合の最終会合としては、WTSAへのAPT共同提案の仮合意案(PACP:Preliminary APT Common Proposal)を完成することを目標とし、今後のWTSAへの対処方針の検討やTSAG会合での事前検討に備える必要があります。ただ、今会合と同時期に開催されたITU理事会において、COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の感染拡大の影響でWTSA‐20が一年以上開催延期される予定であるという情報が入手されたことから、APT WTSA会合の追加会合の計画についても検討されました。

  APTは38ヵ国の加盟国を有し、WTSAへのAPTとしての共同提案(ACP:APT Common Proposal)の検討のために、APT WTSA会合を開催しています。APT WTSA会合はWTSA-20までに4回の準備会合が計画され、第一回会合を2019年6月に日本(秋葉原)で開催しました。それ以降は、タイ、中国、フィリピンでの開催が予定されていましたが、COVID-19の影響で開催計画が見直され、第2回以降のAPT WTSA会合はオンライン会議で開催されています。

  本ブログでは第4回APT WTSA会合の結果概要を速報します。

目次

APT WTSA準備最終会合の結果速報
1.WTSA-20開催日程の再変更
2.オンライン会議形式
3. APT WTSA参加登録者数
4. APT WTSA準備会合のマネジメント体制の更新​​​​​​​
5. 地域標準化機関との情報交換​​​​​​​
6. 審議結果の概要
   6.1   WG1:ITU-T作業方法​​​​​​​
   6.2   WG2:ITU-Tの作業計画とSG再編構成​​​​​​​
   6.3   WG3:規制・政策と標準化課題全般​​​​​​​
   6.4   プレナリー承認されたPACP
7.  今後の予定

1. WTSA-20開催日程の再変更

  WTSA-20は、当初計画では2020年11月16日~27日まで、インドのハイデラバードで開催の予定で、丁度今週には終了する予定でしたが、COVID-19の影響で、ホスト国のインド政府は、ITU理事会の第1回バーチャル理事会(2020年6月オンライン開催)において、WTSA開催日を2021年2月23日~3月5日の期間に延期したい旨を提案し、正式承認がなされました。しかし、その後、COVID-19の感染収束の見通しが得られないことから、インド政府は、第2回バーチャル理事会(2020年11月16日~20日オンライン開催)において、さらに開催時期を延期することを提案し、2022年3月1日~9日に再延期する方針が示されました。
理事会では、WTSAをオンライン形式で開催することも議論されましたが、現状では物理的に現地に集合する開催形式を支持する国が多く、COVID-19の動向に依存することから開催時期の調整が難しい課題となっています。最終的な日程変更の承認には、ITU加盟国193カ国の過半数の賛成が必要で、主管庁によるコンサルテーションが行われ、2021年1月初めまでには正式決定される予定となっています。

2. オンライン会議形式

APT WTSA会合は、オンライン形式での実施により、海外出張を伴わない会議への参加の容易さが要因と思われますが、参加者数の増加が傾向として見られます。しかし一方で、地球レベルで多地域にわたる参加者の時差による会議実施時間の公平性維持、各国の通信インフラ環境に依存した回線品質劣化によるオンライン会合中断への対処、議事紛糾時のオフラインでの個別交渉の実施、オンラインでの投票(Voting)による採決実施方法のルール化など、オンラインによる国際標準化会議の在り方については、今後の課題解決の必要性が認識されました。
COVID-19と共存せざるを得ない環境の中で、出張に伴う経費と移動負荷が削減でき、環境にやさしく、大きな会議設備が不要となり、複数の担当者が時間選択で分担参加しやすいオンライン会議は、今後の国際標準化会議の在り方の新しい形態として積極的な活用を検討する必要があると思います。

3. APT WTSA参加登録者数

  今会合への参加者登録者数の内訳は、APT加盟国の正会員が156名(15ヵ国)、準会員と賛助会員が26名、他の国際標準化機関の代表者が16名、事務局7名の総計205名でした。従来の集合型会合に比べ2倍以上の参加者数の増加です。

  国別の参加者数では、中国が34名と多く、積極的な対応していることと、マレーシア、タイ、インド、インドネシアなどの新興国の参加者が多くなっています。日本は、総務省を代表とし、賛助会員を含めて19名の日本団で対応しました。日本国内では、総務省関係者とITU-TのSG役職者で構成されるWTSA準備アドホックを構成し、また、TTCの国際連携アドバイザリーグループと連携して日本の対処方針を検討しています。

  オンラインのプレナリー参加者の集合写真をZoomの画面キャプチャの一部を示します。

写真:参加者集合写真(参加者画面キャプチャの一部を掲示)
写真:参加者集合写真(参加者画面キャプチャの一部を掲示)

4. APT WTSA準備会合のマネジメント体制の更新

  APT WTSAの役職者について、3名の副議長のうちインドからの副議長の変更提案があり、承認されました。APT WTSA-20の役職者の任期は、会議規則では、WTSA-20を終了し、次回総会となるWTSA-24の準備会合の役職者が任命されるまで、となっています。

  役職者の更新リストを表1に示します。課題別の詳細な議論を推進する3つのWG議長とそれぞれのWG副議長には、日本からは3名の専門家(永沼様、荒木様、本堂様)が選任されており、中国と韓国とインドとの連携関係を維持しながら、日本がリーダーシップを発揮できるマネジメント体制を構築しています。

表1:APT WTSA準備会合マネジメント体制 (20201120日版)

APT WTSA 議長 副議長
プレナリー
前田洋一
(日本・TTC)
Dr. Hyoung jun Kim (韓国)
Ms. Li Fang (中国)
Mr. U.K. Srivastava (インド)
作業グループ WG議長 WG副議長
WG1:
ITU-T
作業方法
Dr. Kangchan Lee 
(韓国)
永沼美保(日本・NEC)
Mr. Ashutosh Pandey (インド)
Mr. Tong Wu(中国)
WG2:
ITU-T
組織構成
荒木則幸
(日本・NTT)
Mr. P.K. Singh (インド)
Mr. Nguyen Van Khoa (ベトナム)
Mr. Kihun Kim(韓国)
Ms. Wang Liang(中国)
WG3:
規制/政策と標準化
関連事項
Dr. Cao Jiguang
 (中国)
本堂恵利子(日本・KDDI)
Ms. Arezu Orojlu (イラン)
Mr. Premjit Lal (インド)
Ms. Nguyen Thi Khanh Thuan (ベトナム)

5. 地域標準化機関との情報交換

  193ヵ国で構成されるWTSAでの審議において提案支持を得るには、個別の国からの提案よりは、各地域標準化機関としての共同提案とすることが有利であり、提案交渉についても地域標準化機関レベルの相互間での情報交換を通じて、事前の協力や連携を図ることが重要となります。

  今会合では、時差で早朝にも拘わらず、ITU-T TSB局長のChaesub Lee氏にジュネーブからオンライン参加いただきました。また、地域標準化機関からは、欧州のCEPT(European Conference of Postal)はドイツから、アメリカ地域のCITEL(Inter-American Telecommunications Commission)はカナダから、旧ソビエト地域のRCC(Regional Commonwealth in the field of Communication)はロシアから、それぞれ代表者に参加いただき、各地域でのWTSA準備状況についての情報交換が行われました。

  APTからは副議長を中心に、他の地域標準化機関の準備会合にオブザーバー参加し、今後も標準化連携のための情報交換を継続していく予定です。

6. 審議結果の概要

  WTSA-20は、4年に一度開催されるITU-Tの総会であり、2021年以降のITU-Tにおける研究委員会(SG)構成及びその議長・副議長の役職ポストの選定と、標準化の重点課題として近年注目されるAI、IoT、スマートシティ、Beyond 5G、量子通信などの今後の標準化方針に関わる決議(Resolution)を作成する重要な会合です。

  APT WTSA会合では、具体的な決議文書や勧告草案の作成検討を3つのWGで課題分担し、各WG議長が各WGの検討責任範囲(Terms of References)に従い、各国からの寄書をもとに審議を行っています。

  WG会合でコンセンサスが得られた提案は、プレナリー会合での承認候補案として審議されます。今会合の最終日のプレナリー会合で承認が得られたものが仮共同提案(PACP: Preliminary ACP)となり、その後、APT加盟国の主管庁による承認が得られたものが最終的なAPT共同提案ACP: APT Common Proposal)となります。

  • PACPの承認条件としては、プレナリー会合での合意(コンセンサス)を前提としますが、意見が対立した場合は、プレナリー会合出席国の25%以上の賛成が得られ、反対国数が賛成国数より多くなければPACPとなります。
  • ACPの承認条件は、上記のPACPが、全てのAPT加盟国(38ヵ国)に対して承認照会(endorsement)が行われ、加盟国の25%(10カ国)以上が賛成し、50%(19ヵ国)以上が反対しなければACPとなり、WTSA-20にAPT共同提案として提案されます。

6.1 WG1:ITU-T作業方法

  • WG1では、ITU-Tの作業方法に関するWTSA決議の改訂(MOD)または廃止(SUP)を検討しています。また、ITU-T Aシリーズ勧告(勧告A.1、A.7等)の改訂に関しては、TSAG会合での検討が必要となることから、TSAGへの寄書提案を可能とする文書種別のAPT Viewとしての合意を目標としました。
  •  WG1からの成果物は、8件のPACP案が作成され、プレナリー会合での承認が得られました。提案の中で、決議22(TSAGの権限に関する決議)と決議32(電子的会議方法に関する決議)の修正提案と、決議35(SGとTSAG役職者の任期に関する決議)と決議45(SG横断的な標準化連携に関する決議)の廃止提案のPACPは日本提案に基づくもので、提案文書のエディタは日本が担当しています。

6.2 WG2:ITU-Tの作業計画とSG再編構成

  • WG2では、ITU-Tの各SGが取り組む作業計画と課題(Question)を含むSG構成を検討しています。また、新規の標準化課題についても、今後のSG構成に密接にかかわることからWG2で議論しています。
  • 新課題については特に、COVID-19に対するEヘルスを含むパンデミック対策、ICTにおけるAIの活用、Machin Visionに関する検討推進、量子情報技術(QIT)に関する検討強化、Vertical applicationを考慮した将来網の検討など、新規決議が中国や韓国から提案がありました。しかし、日本としては、ITU-TのSG13、SG11、SG16での課題と密接な関係がありSGでの検討が進行中であること、また、関連するFG(Focus Group)での検討が継続されている状況では、決議の作成は時期尚早であり、新決議案に反対の立場を主張しました。最終プレナリーでの審議では、日本提案に対して同様の意見を示すオーストラリアと連携した対処を行ってきました。結果として、新決議については、COVID-19に代表される重要課題である“ITU-T’s role in facilitating the use of ICTs to prevent the spread of global pandemics”の決議のみのPACPを合意することができました。
  • SG構成のハイレベルな再編原則については、WTSA-16で合意したハイレベルSG再編7原則を基本とし、中国からの提案を中心にAPT Viewとして合意することができました。
  • SG再編案については、TSAG会合において、TSB局長のたたき台(Food for thoughts)が提案されており、現状11個のSG構成に対して、SG数を大幅削減する提案が欧州CEPT等で検討されています。APTでも韓国やマレーシアなどSG数削減に同調する意見もありましたが、今会合では、APT統一案として、日本からSG20のIoTセキュリティ課題(課題6/SG20)をSG17 とSG2への部分移動を含みますが、SG構成としては既存SG数を維持するSG構成案を提案し、中国の支持と韓国、マレーシアなどの了解を得て、APT統一案として合意することができました。SG再編構成はSG議長及び副議長の選挙に密接に関係することから、それぞれの国および地域の事情を把握しつつ、WTSA本番での決着に向け、今後の対処が必要となります。

6.3 WG3:規制・政策と標準化課題全般

  • WG3は、規制・政策および標準化課題全般に関わる決議を扱うことから、対象文書数も多く、WG3から入力されたPACP決議は18件となりました。

6.4 プレナリー承認されたPACP

  今会合の最終プレナリーで合意されたPACPは29件、APT Viewが5件となりました。

  各文書のテキストと他の地域機関からの提案状況とのまとめを表2に示します。

表2:APT提案予定の決議/勧告文書一覧

決議
No.
決議タイトル 担当WG 備考
関連文書
他SDO
提案状況
1
1
(MOD)
ATU (MOD)
IAP (MOD)
ECP (MOD)
RCC (MOD)
2
2
(MOD)
Arab (MOD)
RCC (MOD)
18
1
OUT-08 /WTSA3
(MOD)
ATU (MOD)
IAP (MOD)
RCC (MOD)
22
1
OUT-05 /WTSA3
(MOD)
ATU (MOD)
IAP (MOD)
ECP (MOD)
32
1
OUT-06 /WTSA3
(MOD)
ATU (MOD)
IAP (SUP)
35
1
(SUP)
ATU (SUP)
IAP (SUP)
ECP (SUP)
RCC (SUP)
45
1
OUT-07 /WTSA3
(SUP)
ATU (SUP)
ECP (SUP)
IAP (SUP)
50
3
(MOD)
Arab (MOD)
ATU (MOD)
ECP (MOD)
IAP (MOD)
RCC (MOD)
52
3
(MOD)
Arab (MOD)
RCC (MOD)
55
1
(MOD)
ATU (MOD)
58
3
(MOD)
ATU (MOD)
60
3
(MOD)
ATU (MOD) ECP (MOD)
64
3
(MOD)
ECP (MOD) IAP (MOD)
67
1
(MOD)
ATU (MOD)
ECP (MOD)
RCC (MOD)
72
3
(MOD)
ATU (MOD)
Arab (MOD)
ECP (MOD)
IAP (MOD)
RCC (MOD)
73
3
(MOD)
ATU (MOD)
ECP (MOD)
IAP (MOD)
RCC (MOD)
76
3
/WTSA3
(MOD)
ATU (MOD)
Arab (MOD)
IAP (MOD)
77
3
(MOD)
IAP (SUP)
78
2
(MOD)
 
79
3
/WTSA3
(MOD)
ATU (MOD)
RCC (MOD)
84
3
(MOD)
IAP (MOD)
88
3
(MOD)
ATU (MOD)
89
3
(MOD)
ATU (MOD)
92
3
(MOD)
ATU (MOD) RCC (MOD)
95
3
(MOD)
ATU (MOD)
96
3
(MOD)
ATU (MOD)
IAP (MOD)
97
3
(MOD)
ATU (NOC or MOD)
IAP (MOD)
98
3
(MOD)
Arab (MOD)
ATU (MOD)
IAP (MOD) RCC (MOD)
New
ITU-T’s role in facilitating the use of ICTs to prevent the spread of global pandemics
2
(ADD)
 

 2. APT-WTSA A-series Recommendation Tracking Table

決議
No.
決議タイトル
担当WG 備考
関連文書
他SDO
提案状況
A.1
Working methods for study groups of the ITU Telecommunication Standardization Sector
1
(MOD)
ATU (MOD) ECP (MOD)
A.7
Focus groups: Establishment and working procedures
1
(MOD)
ECP (MOD)
IAP (MOD)
A.8
Alternative approval process for new and revised  ITU-T Recommendations
1
OUT-10 (MOD)
ECP (MOD)

7. 今後の予定

  今後の関連会合の開催の予定を表3に示します。

  APTのWTSA準備会合としては、WTSAまでに3回の会合が追加されたTSAG会合への対処の検討を行うとともに、他の地域標準化機関のWTSAへの共同提案を分析し、APTとしてのWTSAにおける対処方針を検討するAPT WTSA追加準備会合が提案されました。また、APT WTSA会合としては、WTSA会合期間中の現地でのAPTコーディネーション会合がミッションとなり、私は議長としての対応が必要となります。

表3:今後の関連会合予定 

会合 日程 場所
WTSA地域連携準備会合
2021年1月8日
オンライン会合
TSAG会合
2021年1月11日~18日
オンライン会合
APT WTSA 追加会合
2021年第3四半期(9月)
オンライン会合
TSAG会合
2021年10月18-22日
(又は10月25-29日)
オンライン会合かジュネーブ開催かは未定
TSAG会合
2022年1月頃
オンライン会合かジュネーブ開催かは未定
WTSA会合
2022年3月1日~9日
インド(ハイデラバード)