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WTSA-24 に向けた第2回TSAG会合報告

  5月30日(火)から6月3日(金)まで、ITU-TのTSAG(Telecommunication Standardization Advisory Group:電気通信標準化諮問会議)会合がジュネーブのITU本部とオンラインのハイブリッドで開催されました。本会合は、2022年~2024年研究会期における第2回目の会合になります。5月29日(月)が、聖霊降臨祭月曜日の休日のため、従来の5日間から4日間のタイトなスケジュールで開催されました。今回、発言者は2分以内で収めるようにとの要請があり、2分経過後には、赤字でタイマー表示されるカウンターで管理されました。その効果もあり、スムーズな進行がなされたと感じました。

写真1 発言者へのカウンターでの時間管理の徹底
写真1 発言者へのカウンターでの時間管理の徹底

  本ブログでは、TSAGの全体概要と今回の主要トピックであった、産業界の活発な関与、デジタルトランスフォーメーションに関するFG(Focus Group)の新設の提案結果について報告します。TSAG会合全体の結果については、TTCの国際連携アドバイザリーグループのTSAG対応タスクフォース会合で報告・審議しますので、関心のある方はTTCにお尋ねください。

1.TSAG全体概要

  今回のTSAG会合には60か国から約260名(内オンライン121名)の参加者がありました。日本からは、総務省国際戦略局通信規格課の重野誉敬国際情報分析官を日本団団長として、今回は国内各社・団体(NEC、NTT、NTTドコモ、OKI、日立、TTC)から8名の現地参加と、総務省、KDDI、NICT、日立、富士通、日本ITU協会から8名のリモート参加がありました。

  TSAG会合では、ITU-Tにおける全てのSG(Study Group)の標準化活動を検証するとともに、会議規則や他の標準化機関との連携に関する手続きなどの見直しを行い、今後ITU-Tが取り組むべき標準化課題の分析を基に、次会期に向けたSG体制案の検討を行い、2024年のWTSAへの提案を検討します。

2.プレナリ 

  初日5月30日のプレナリでは、事務総局次長、RB局長、TSAG局長の挨拶に続きTSB局長から挨拶がありました。尾上 誠蔵 TSB局長からは、ITUの標準化のプラットフォームに主な専門家が集い、その標準により最新のICTの進歩の恩恵を、世界のすべてが享受する事が優先事項である。ITU標準が、寄書という成果物で無く、標準をベースにネットワークに実装し、アプリケーション・サービスに反映するものにする、いわゆる「使われる標準」となることを目指すとともに、ITUに主要な産業界が興味を持ち、集う議論の場としたい、とのお話がありました。

写真2 プレナリの様子
写真2 プレナリの様子

2.1 FGの活動報告

以下のFGより、活動報告がありました。

  • Focus Group on metaverse (FG-MV)
    前回TSAG会合でTSAG配下でのFGとして承認。3月にサウジアアラビアで開催された第一回会合の報告。
  • Focus Group on costing models for affordable data services (FG-CostingData)
    SG3配下に設立されたFG、10月にインドで第一回会合を予定。
  • Focus Group on Autonomous Networks (FG-AN):
    2023年12月までの活動延長を報告。
  • Focus Group on Testbeds Federations for IMT-2020 and beyond (FG-TBFxG):
    2024年6月までの活動延長を報告。

2.2 FGの新設提案

  Focus Group on Digital Transformation(DX)の設立は、議論の結果、FGではなく、TSAGのRG(Rapporteur Group)として検討することになりました。IECでもDXの検討が始まっており、ITU-Tとして何を標準化対象とするか、他標準化開発機関との作業分担をどうするか等について今後議論される予定です。今後の本RGの情報については、注視して共有します。

2.3 JCA(Joint Coordination Activity)の活動報告

以下のJCAより、活動報告がありました。

  • Digital COVID-19 certificates (ITU-T JCA-DCC):
    2月に開催された会合の報告。9月に関連ワークショップと第5回会合を韓国で開催予定。

また、以下のJCA活動報告がされました

  • JCA on Quantum Key​​​​​​​ Distribution Network (ITU-T JCA-QKDN)
  • JCA on IMT-2020 and Beyond (JCA-IMT2020)
  • Coordination with IEC, ISO, IEC-ISO-ITU-T SPCG

  その他、4月末にロンドンで開催されたGlobal Standardads Collaboration(GSC-23)について報告やITU内での連携の報告、Coordination with Collaboration on ITS Communication and ITS-related activities(CITS) の報告がありました。

3.  主な議論

3.1 WP1の主要トピックス

3.1.1 作業方法 RG(Work Methods)

限られた時間のため、会合前後や昼時間にエディティングセッションを設け、議論されました。

  • 勧告A.1の改正案:NWI提案支持国の数、2回以上会合での寄書が無い作業項目の扱い等、継続審議。ITU-Tセクターの各グループの会議における議長および副議長の不出席に対するPP決議208の実施に関するガイダンスの必要性の韓国提案については、今回会合では承認せず、次回以降持ち越し。ラポータとエディターのトレーニングセッションへの参加が必須であることを示す文章を追加。
  • 勧告A.4(フォーラム・コンソーシアムとの連絡手続)及びA.6(各国及び地域標準化団体との連絡手続)の認定組織のリストの現行化と、それらがA.5(ITU-T勧告における他標準化機関の文書参照手順)の認定を受ける必要があるのか検証するカナダ提案について議論。
  • 勧告A.7(フォーカスグループ:設立と作業手続き)の改訂テキストのサウジアラビア提案をレビュー。
  • 勧告A.8(新規および改訂ITU-T勧告のための代替承認手続き)の英国からの変更提案について議論。
  • 勧告作成のためのITU-T Author's guideの更新。
  • 2024年2月のTSAG次回会合時に、ISCG会合を開催する。
  • 勧告A.23(ITU-T及びISO/IEC JTC1協力の手引書) Annex A(欠陥報告様式)「 ISO/IEC JTC 1 Standing Document 3 and Supplement 5 to the A-series of ITU-T Recommendations」をSPCGに共有。

3.1.2 WTSA準備RG(WTSA Preparations)

  • 決議11(郵便及び電気通信の両分野に関係する業務の研究についての万国郵便連合(UPUの郵便業)に関し、UPUにリエゾン送付について議論。文書を審議して送付に合意。
  • WTSA決議の合理化のための分析、検討及びフィードバックを検討予定。

3.2 WP2の主要トピックス

3.2.1 作業項目・再編、SG作業 / 調整RG(Work Programme and  Restructuring, SG work, SG Coordination)

TSAG副議長で、本ラポータのNEC永沼 美保 氏が議長が務められ、以下の議論がされました。

  • 提案のITU-T SG再編分析に関する基本文書について特にKPIに関する記述を更新。
  • 提案のSG再編分析のための行動計画の実施について、SGへ進捗報告を行うことを合意。
  • 提案の全SG作業領域のマトリクスについて議論を行い更新。

3.2.2 産業界とのエンゲージメント、メトリクスRG(Industry Engagement, Metrics)

  • ワークショップ運営委員会のToRについて議論、地域から2名の運営委員を募集、日本からNTT(山本 浩司 氏)に依頼、他中国の予定。
  • また、ITU-Tへの若手の参加に向けた取り組みへの提案、地域の標準化開発機関との連携について議論。
  • 韓国からのSG17の活動を参考にしたインキュベーション(起業および事業創出支援)の提案については、すべてのSGへリエゾン文書を送り確認。

4. 今後の予定

 表1にTSAG会合も含めた、現時点での2024年のSG会合の日程、表2にTSAGのRGの日程を示します。次回、第3回TSAGは、2024年2月26日から3月1日にジュネーブで開催予定です。第4回TSAG会合は、2024年7月29日から8月2日ジュネーブで予定されています。なお、WTSA-24およびGSS会合は2024年10月12日から24日までインドのニューデリーで開催されます。

表1 ITU-T Study Groups meetings 2024 

ITU-T Study Groups Date Host Country/City/Entity Potential Venue/Virtual
SG11 RGM/WP
29/01 - 07/02/2024         
 
Virtual (tbc)
SG13
21/02 - 01/03/2024 (Option 1 overlaps with TSAG) or
04 - 15/03/2024
Geneva (tbc)
 
IRM-1
22/02/2024 (tbc)
 
Virtual
TSAG
26/02 - 1/03/2024
 
CICG Premises
SG17
February/March 2024 (tbc)
South Africa (tbc)
 
SG9 (WP1, WP2)
March/April 2024 (tbc)
Japan/China (tbc)
 
SG20
04 - 12/03/2024 
(tbc)
 
SG16
15 - 26/04/2024 or 22/04/2024 – 03/05 2024 (tbc)
UAE or France (FRNB) (tbc)
 
SG12
15 - 25/04/ 2024 (tbc)
(tbc)
Venue (tbd)
SG5
May/June 2024 (tbc)
 
Venue (tbd)
SG13
13 - 24/05/2024 or  20 - 31/05/2024
(tbc)
Venue (tbd)
SG11
15 - 24/05/2024 or  
22 - 31/05/2024 (tbc)
Tunisia (tbc) or Geneva (tbc)
Venue (tbd)
SG20
20 - 28/05/2024
Geneva (tbc)
 
SG3
22 - 31/05/2024 (tbc)
Bucharest (tbc)
 
SG2
03 - 07/06/2024  or
17 - 21/06 2024
 (tbc)
 
SG15
01 - 12/07/ 2024
IEEE, Montreal, or Geneva (tbc)
 Venue (tbd)
IRM-2
25/07/2024
 
virtual
TSAG
29/07 - 2/08/2024 (tbc)
Geneva (tbc)
CICG Premises
SG9
September 2024 or after WTSA-24 (tbc)
Japan, China (tbd)
 
SG2
 Early September 2024
 
Virtual (One-day e-plenary)
SG13
09/09/2024 (tbc)
Geneva (tbc)
 
SG17
September 2024 (tbc)
(tbc)
 
GSS-24 WTSA-24
14 - 24 /10/2024
India
 

表2 Rapporteur Group meetings

Rapporteur Group Date Potential Venue/Virtual
RG-WM
27/06/2023
Virtual
04/07/2023
Virtual
12/09/2023
Virtual
24/10/2023
Virtual
21/11/2023
Virtual
05/12/2023
Virtual
RG-IEM
27/07/2023
Virtual
05/09/2023
Virtual
09/10/2023
Virtual
07/11/2023
Virtual
12/12/2023
Virtual
30/01/2024
Virtual
RG-WPR
05/07/2023
Virtual
13/09/2023
Virtual
15/11/2023
Virtual
10/01/2024
Virtual
RG-WTSA
21/09/2023
Virtual
19/10/2023
Virtual
16/11/2023
Virtual
18/01/2024
Virtual
TSAG
26/02 - 01/03/2024
CICG Premises

5おわりに

  前回12月の会合とは異なり、会期中は、天候が良く、清々しい陽気でした。今回、日本からの現地参加者は8名でしたが、各国からの現地参加者が増えております。プレナリで新興国の現地参加者の支援要請がありましたが、日本やセクターメンバーからの資金援助によるBSGプログラムへの期待がありました。TSAGのRGでも、産業界の活発な参画について議論されており、日本企業の方々の参加をお願い致します。今回もリモートでの参加者の方々、深夜までの会合参加ありがとうございました。尾上TSB局長の目指すITU-T改革に少しでも貢献できるように尽力して参ります。