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キャパシティ ビルディング アドバイザリーグループの設立

  例年よりも桜の開花も早く暖かい日々が続いております。新年度に新たなスタートを迎えた方々の活躍を心より祈念申し上げます。

  新たに設立したキャパシティ ビルディング アドバイザリーグループについて紹介します。桜の開花には早かったですが、アドバイザリーグループ発足に先立ち、リーダである横谷 哲也 氏(学校法人金沢工業大学)のご協力で、2023年3月20日に、しいのき迎賓館(石川県金沢市)にて準備会合を実施しました。なお本会合に引き続き、電子情報通信学会のICT分野における国際標準化と技術イノベーション特別研究専門委員会の「北陸発イノベーションの世界への発信」が開催されました。

  標準化の場は、ITU等の国際標準化機関に加え、業界主体のフォーラムやコンソーシアムの場、オープンソースコミュニティの場へと多様化しています。標準化の手法も、寄書を提案し勧告化を行う手法に加え、実装作業を共同で行う手法などへと多様化しています。標準化のプロセスも、新たな技術の研究成果を標準化する流れに対して、ビジネスをグローバルに展開するためのルール形成の手段として標準化を用いるケースも増えています。標準化の領域も、情報通信分野に閉じた標準化から、分野横断的なものに広がっています。標準化に関わる人材もこれらの変化へ対応して多様化し、会合をハンドリングする役職者、提案書を作成、提案、文書を完成する人材に加え、経済安全保障上、他国の国際標準化提案に対しての影響を判断、対処する人材と多岐に渡っています。

  国内の標準化団体として、それぞれの多様化の変化に柔軟に対応していく努力はしておりますが、活動して頂くメンバーの不足が日本全体としての課題となっております。

  標準化人材を含めグローバルな場でルール形成等を推進する絶対数の不足の要因は、ベテラン標準化人材から若手へと継承がされないケース、横断的な分野へ対応するための他分野の知識不足、他分野の専門家の取り込みが課題となっているケース等があります。また、標準も多様な視点が求められており、ジェンダーギャップ解消やアクセシビリティに対する考慮が必要です。

  日本国内における標準化人材の不足は繰り返し話題となり、過去にも各省庁や標準化関連団体において、研修や教育ツールの提供、出張支援等の多くの施策は行われていますが、環境の変化や多様化に対して追随できず、抜本的な解決に至っていないのが現状です。

  国内標準化の重複作業回避や対応人材の不足に対して、国内の標準化機関の連携は重要であり、ISO/IEC JTC1の国内審議団体である情報規格調査会やIECの国内委員会の方々と意見交換を定期的に実施して参りましたが、連携による効率化だけでなく、標準化人材の育成・拡大に向けた取り組みが必要という共通の課題意識に基づき、組織横断的に人材育成の課題解決に取り組むため、TTCに新しくキャパシティ ビルディング アドバイザリーグループを設立しました。

  日本の産業の発展、国際競争力の確保の観点から、標準化の活用及び運営に関わる人材の今後、TTCを含めた国内の標準化人材育成に関わる組織等で新たに必要な活動や強化すべき取り組み等について、TTC内外の標準化や標準化教育、情報通信分野の標準化に関係の深い事業に携わる有識者の方々から意見をいただき、日本全体での人材育成に取り組んで参ります。

  当アドバイザーグループの成果物としては、 以下を目標としています。

  • 国内外の標準化人材育成に関する調査、ランドスケープ作成
  • 標準化人材のスキルマップや標準化成功事例集等の情報の体系化
  • 国内の標準化活動活性化に資する人材育成等のプログラム及びアクションプラン

  また、活動の対象範囲としては以下を予定しています。

  • 国内企業等が標準化戦略を事業に組み込み、標準化に関わる人材育成に計画的に取り組むことの支援を通じ、国内の情報通信産業の国際競争力の強化に資する取り組みの検討
  • 国内企業の標準化専門家以外の人材や大学生等への標準化の理解の促進・進化の方法の検討
  • 大学等教育機関を含めた標準化教育に関わる人材へのコンテンツ提供等支援方法の検討

  なお当アドバイザリーグループは有志のメンバーによる活動となり、TTCでの活動は企画戦略委員会を通じて具体化していく予定です。

  当アドバイザリーグループでの活動成果が、会員企業のみなさまの事業実態に即したものとなり、また企業のみなさまでの人材育成にお役立ていただけるものとなるよう、今後、会員企業のみなさまへのアンケートや、標準化の成果や標準化人材育成の取り組み等のヒヤリングを予定しておりますので、ご協力宜しくお願いいたします。

しいのき迎賓館
しいのき迎賓館
準備会合の様子
準備会合の様子