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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

APTの第41回管理委員会会合に出席

 APT(Asia-Pacific Telecommunity:アジア・太平洋電気通信共同体)の第41回管理委員会(MC-41:Management Committee)会合が、タイ王国の首都バンコクのCentara Grand Hotelにおいて、2017年11月19日〜22日まで、タイ政府のデジタル経済社会省(MDES:the Ministry of Digital Economy and Society)のホストにより開催されました。MCの議長は. Ilyas AHMED氏(モルジブ)、副議長は Sang-hun LEE氏(韓国)とCharles CHEW氏(シンガポール)です。今回のMC-41会合にはAPTメンバー38カ国のうち30カ国の主管庁を含む109名が参加しました。

 私は昨年改訂されたASTAP作業規則における「ASTAP議長はASTAPを代表して管理委員会(MC)に参加すること」の規定に基づき、1年間の活動報告のために、2017年に開催のASTAP-28ASTAP-29の会合結果を報告するとともに、次年度2018年の会合開催計画の承認を得るために、MC会合に初めて出席しました。本ブログでは、MC-41会合におけるASTAP関連の情報を中心に会合概要を報告します。

MC-41会合模様
MC-41会合模様

 MC-41会合直前の2017年11月15日〜17日には、APTの最高機関で3年毎に開催される総会の第14回会合(GA-14:General Assembly)が開催され、APT事務局長と事務局次長の選出選挙が行われました。事務局長には現職のAreewan Haorangsi女史(タイ)が、事務局次長には総務省出身の近藤勝則氏が再選されました。事務局長と次長の任期は、2018年2月から2021年1月までの3年間です。

 GA-14は、2018〜2020年のAPTの戦略計画を承認するとともに、2018〜2020年の年間支出限度額および各国の拠出金額を決定しました。参考までに2018年の年間予算の支出限度額は約264万米国ドル、日本の年間確定拠出金は40ユニット(1ユニット:10,280米国ドル)です。日本はAPT加盟38ヵ国の中での最大の拠出金の貢献国です。なお、TTCはAffiliate会員(APT加盟国の電気通信事業者及びメーカー、団体:全131社加盟)として貢献しています。

Haorangsi事務局長との写真
Haorangsi事務局長との写真
近藤事務局次長との写真
近藤事務局次長との写真

 MC-41は、 GA-14の決定方針に基づき、2017年のAPTの活動内容を検証するとともに、2018年の作業計画と予算計画の詳細について決定しました。MCでの詳細検討は、予算(Budget)と作業プログラム(Work Program)の課題に分担して、MC副議長がそれぞれリーダを担当するアドホックグループを構成して検討します。

 APTの活動には、APTの戦略計画の活動方針に対応するために、GAで確立した戦略計画における以下の5つの戦略的柱に従って、様々なプログラムがあります。

a.Connectivity: 接続性:デジタルインフラストラクチャの開発。

b.Innovation: イノベーション:支援的な環境を実現し、新技術の利点を生かす。

c.Trust: 信頼:ICTを通じたセキュリティと回復力の促進。

d.Capacity Building: キャパシティビルディング:包括性の促進と専門知識の強化。

e.Partnership: パートナーシップ:ステークホルダーとの戦略的協力を固める。

 今回承認された主なプログラムを挙げると以下の計画実施が決定されました。

【Partnership: APT域内調整・準備活動】

  • ITU全権会議開催のためのAPT準備グループ(APT PP-18
  • 2019年世界無線通信会議APT会議準備グループ(APG-19
  • 世界電気通信開発会議APT準備グループ(APT WTDC-17

【Policy for Connectivity and Innovation: 政策・戦略検討活動】

  • 2018年〜2020年のAPTの戦略計画に関する通信部会(CGSP
  • APT法的文書に関する管理委員会ワーキンググループ(WGMC
  • APT政策と規制フォーラム(PRF
  • 太平洋に関するAPT政策と規制フォーラム(PRFP
  • 南アジア電気通信監督委員会(SATRC
  • APT通信・ICT開発フォーラム(ADF

【Technology and Development for Connectivity and Innovation: 技術開発推進・標準化活動】

  • APTワイヤレスグループ(AWG
  • APT標準化プログラム(ASTAP
  • 適合性および相互運用性イベント(C&I

【Trust: トラスト】

  • APTサイバーセキュリティフォーラム(CSF

【Capacity Building: 人材育成】

  • キャパシティ・ビルディング・プログラム(HRD)

 ASTAPは、APTの戦略計画の中で、APT地域における電気通信標準化活動の促進、調整、調和を図り、地域協力を通じた技術課題を研究する役割を有し、会員間の標準化の専門知識のレベル向上とAPT地域のICT問題に関する実践的な検討を通じた調査活動を行うことが期待されるグループと位置付けられます。

 MC会合では、それぞれのプログラム議長からの2017年の活動報告を受け、活動内容を検証し承認するとともに、2018年の活動計画について、計画概要と割当て予算を承認しました。私が担当したASTAP-28ASTAP-29の報告はいずれも無事に承認されました。

 ASTAP-28で提案されたASTAP議長・副議長の役職任期を2年から3年間に拡大する変更案についても正式承認が得られました。1期3年最大2期までの任期規定となります。私の場合、2020年3月までがASTAP議長の任期となります。

 ASTAP-29会合で承認した新規勧告草案「Standard Specification of Information and Communication System using Vehicle during Disaster」については、郵便投票での最終承認を行うために、ASTAP-29会合後、APTメンバー38カ国の主管庁に照会回覧されました。APTメンバー国の25%(10ヵ国)以上の支持回答が得られ、かつ2ヵ国以上の不支持回答が無ければ、MC会合での最終承認を得られる承認手順です。しかしながら、本勧告草案については9カ国の支持回答と1カ国の不支持コメントが回答され、承認条件不十分であったことから、MC会合には提案されず、ASTAPでの再審議をすることとなりました。

 今回の勧告草案の不成立に関し、私はASTAP議長として、ASTAP会合で19カ国の主管庁の参加の下で支持を得て完成した勧告草案が照会回覧では十分な回答数が得られなかった点について各主管庁への投票要請や審議手続きを踏まえた見直しの必要性を含め課題があるのではないか、という懸念をMC会合での活動報告の中で表明しました。今回のMC会合では、承認手続きの改善策についてASTAPでの提案が要請され、その検討結果を待って改めて次回MC会合において承認手続きの見直しの必要性があるかを含めて検討することとなりました。

 次回のMC会合日程は、まだ確定していませんが、2018年9月末に4日間、モンゴル(ウランバートル)のホストによる開催が予定されています。

 また、次回のASTAP-30会合は、ホストは未定ですが、2018年5月21日~25日までの5日間(初日にIoTに関するインダストリ・ワークショップを含む)の開催計画が決定しました。インダストリ・ワークショップの講演や再チャレンジする勧告草案の詳細内容に関心のある方は、TTC事務局にお尋ねください。また、総務省およびTTCのASTAP関連委員会での報告会をご参考ください。