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ASTAP会合結果速報:V-HUBシステム勧告草案承認

2017年08月29日

 残暑お見舞い申し上げます。

 タイ王国の首都バンコクで、8月22日~25日に開催された第29回ASTAP (Asia-Pacific Telecommunity Standardization Program) 会合の議長として対応するために出張しました。今回のASTAP会合には、APT (Asia-Pacific Telecommunity:アジア・太平洋電気通信共同体) 加盟国38ヶ国の内、19か国の主管庁代表を含め、約130名が参加しました。

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ASTAP-29会合参加者の集合写真

 今会合の主な成果としては、以下の2点が挙げられます。一点目は、ASTAPの成果物として、日本のメンバーが中心になって検討を推進してきた V-HUB (Vehicle Hub:災害時にクルマを使った情報通信) システムに関する勧告 (Recommendation) 草案を承認したこと、二点目は、APT地域の標準開発組織 (SDO:Standards Development Organization) の代表者を招いて「標準化ワークショップ」を初めて開催できたことです。本ブログでは、ASTAP会合の主要結果の概要について報告します。

1.ASTAP-29主要な成果文書

 ASTAPの検討体制は11の専門グループと分野ごとに専門グループを取りまとめる3つの作業グループで構成されます。各専門グループからの成果物は作業グループでの承認を得たうえで、最終プレナリーにおいて承認します。今会合では、3件のレポート文書 (Report)、4件の調査質問表(Questionnaire)、4件のリエゾン文書に加えて、1件の新規勧告草案(Draft Recommendation)文書を承認しました。

 新規勧告草案は、ASTAPの今までの成果物としては2012年制定以来の2件目の提案となります。この提案の背景としては、2011年の東日本大震災と津波災害、2013年のフィリピン台風大災害を踏まえ、災害地域における情報通信基盤の迅速な構築を目指しています。クルマを災害時の「情報ハブ」として活用する情報通信インフラストラクチャーは、災害リスクを共有するアジア太平洋諸国にとって不可欠なものであると考えます。本勧告のタイトルは「Standard Specification of Information and Communication System using Vehicle during Disaster」で、V-HUBシステムと呼ばれる、車両を利用した災害時情報通信システムの技術要件と機能アーキテクチャ仕様を規定するもので、災害で破壊された通信インフラストラクチャを車両から車両(V2V)への通信に置き換えるシステムです。

 勧告文書の検討は、TTCコネクテッド・カー専門委員会のメンバーが推進役となり、フィリピン、タイ、マレーシア、パプアニューギニア、日本からの専門家の参加を得て進められました。勧告草案のエディタとしては、TTCから千村氏(OKI)、大西氏(トヨタIT開発センター)、眞野氏にご貢献いただきました。勧告草案承認に関わる活動を支援してこられたTTC関係者の皆様のご貢献に御礼を申し上げます。

 なお、APTの勧告承認手続きでは、ASTAPプレナリーで承認された勧告草案は、まずAPTメンバー38カ国の主管庁に6週間の照会期間を設けて回覧されます。勧告化支持か不支持かの回答が集計され、APTメンバーの四分の一(10ヵ国)以上の支持回答が得られ、かつ2ヵ国以上の不支持回答が無ければ承認され、更に勧告草案はAPTの管理委員会(MC:Management Committee)に報告され、MCでの最終承認を得たうえで、正式な勧告となります。 

 このように長期間の多くの手続きを経ることから、最終承認を確認するまでの今後のフォローアップが大切です。

2.標準化ワークショップの開催と今後のアクションアイテム

 4日間のASTAP会合の初日には、APT地域の中で6ヵ国のSDO代表者を招いて意見交換を行う「標準化ワークショップ」を初めて開催しました。「標準化ワークショップ」は、ICTを活用した社会インフラの構築や様々なビジネス展開が進み、規制や標準の重要性の認識が高まる中で、SDOの組織や仕組み自体を有しないAPT地域における開発途上国にとって、SDOの役割を理解するとともに、今後新たにSDOの設立に向けた検討を行うにあたっての課題を明らかにする機会を提供することを目的に企画されました。

 ASTAPでは、BSG (Bridging the standardization Gaps:標準化格差是正) の対処の一環として、APT地域の以下のSDO代表者を招待し、各組織の設立背景と最新の標準化活動の紹介を行う講演セッションと、意見交換のためのパネル討論セッションとで構成しました。 日本からはARIBとTTCが代表として招待を受け参加しました。

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パネル討論の模様

「標準化ワークショップ」の審議を通じて、以下の点が認識されました。

これらの認識を踏まえ、ASTAPとしての今後の対処としては、以下の点が提案されアクションアイテムとして合意されました。

-  標準化のための開発途上国の真のニーズの特定、SDOや委員会などの標準化のための国家体制の確立
-  SDOや委員会を設置するためのガイドラインの作成

3. その他の合意内容

(1)ASTAP組織構成と役職者の更新

 ASTAP運営を推進する役職者については、一部メンバーの更改を承認し、表1の通り承認されました。ASTAP役職者には、多くの日本の専門家の方々に参画いただいております。今会合ではWG-SAのSafavi議長が欠席のため、永沼美保様にはWG議長代理を担当頂きました。以下の写真はAPT事務局長(Areewan Haorangsi女史)と次長(近藤勝則氏)とASTAP副議長との記念写真です。

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APT事務局長・次長・ASTAP副議長との記念写真

表1.ASTAP組織体制

組織・作業グループ/専門家グルーブ

役職者(副議長を除く)

ASTAP議長

前田 洋一(日本)

ASTAP副議長

Ms. Haihua Li(中国)
Dr. Hyoung Jun Kim(韓国)

WG PSC (Policy and Strategic Co-ordination)

Mrs. Nguyen Thi Khanh Thuan(ベトナム)

EG BSG (Bridging the Standardization Gap)

Mrs. Nguyen Thi Khanh Thuan(ベトナム)

EG PRS (Policies, Regulatory and Strategies)

Mr. Felix Rupokei(パプアニューギニア)

EG GICT&EMF (Green ICT and EMF Exposure)

Dr. Sam Young Chung(韓国)

EG ITU-T (ITU-T Issues)

釼吉 薫(日本・NEC)

WG NS (Network and System)

Dr. Joon-Won Lee(韓国)

EG FN&NGN (Future Network and Next Generation Networks)

Dr. Joon-Won Lee(韓国)

EG SACS (Seamless Access Communication Systems)

小川 博世(日本・ARIB)

EG DRMRS (Disaster Risk Management and Relief Systems)

千村 保文(日本・OKI)

WG SA (Service and Application)

Dr. Seyed Mostafa Safavi(イラン)

EG IOT (Internet of Things)

山田 徹(日本・NEC)

EG IS (Security)

永沼 美保(日本・NEC)

EG MA  (Multimedia Application)

山本 秀樹(日本・OKI)

EG AU (Accessibility and Usability)

Dr. Jee-In Kim(韓国) 

 

(2)次回ASTAPにおけるインダストリ・ワークショップ企画提案

 初日に行われた「標準化ワークショップ」からの提案を踏まえ、次回のASTAP会合の初日に、「IoT」をテーマとして、APT地域におけるIoTに関するアプリケーション側面と技術的側面の2部構成でインダストリ・ワークショップを開催することとなりました。アプリケーションではAPT地域にふさわしい農業系や自動車関連を考慮し、技術的側面では、IoT技術の他、AI(Artificial Intelligence)、ブロックチェイン、クラウドベースイベントデータ等の技術課題を扱う予定です。

 ワークショップの運営のため、ASTAP副議長であるHyoung Jun Kim氏を議長とするインダストリ・ワークショップのプログラム委員会を設立し、日本からは成瀬由紀様(NICT)にご担当頂くことになりました。

(3)今後のASTAP会合日程

 次回ASTAP-30の日程は2018年5月21日~25日での開催予定で、開催地は未定でホスト国を募集しています。

 各SDOのワークショップ講演、成果文書の詳細内容に関心のある方は、TTC事務局にお尋ねください。また、総務省およびTTCの関連委員会での報告会をご参考ください。

 


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