マエダブログ

マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

「コネクテッド・カー」新専門委員会が発足

 草木をはじめとする万物が満ち溢れ、木々の緑もだんだん色が濃くなってきました。日比谷公園の木々の緑や花々の鮮やかな彩りは、初夏をさわやかに演出してくれています。皆様の職場、家の周りの景色はいかがでしょうか?さて、今回のブログでは、TTCの企画戦略委員会で新設が決定された新しい専門委員会についてご案内します。

 クルマがネットワーク端末になる、あるいはネットワークの一部になる時代が到来しました。今までTTCのマルチメディア応用専門委員会の中の「スマートカーサブワーキンググループ(SWG) 」で検討されてきた、次世代移動通信網におけるクルマ関連の課題抽出、国際標準化や国際協調に向けたワークアイテムの検討が進展し、具体的に、ITS(Intelligent Transport Systems)に関する国内外の標準化動向を調査し、日本だけではなく国際的にも重要となる標準化課題を抽出し、調査・検討を行うために、新たにICT活用アプリケーション部門における 「コネクテッド・カー専門委員会」 として設立することとなりました。

 今までスマートカーという言葉は新聞記事などでも広く使われ一般化してきましたが、「自動運転などクルマ自体のスマート化」を意味することが多く、TTCでの検討範囲は「クルマに関する通信技術の標準化」であり、クルマ同士、あるいはクルマとネットワークインフラや他のネットワークアプリケーションとつながることによる課題が中心であると考え、「つながるクルマ」を意味する「コネクテッド・カー」と命名することとしました。

 「コネクテッド・カー専門委員会」では、クルマ関連の通信技術の国内外の標準化に関する課題抽出と具体的な仕様検討を行う予定で、具体的な課題内容について以下に概説します。

 

「コネクテッド・カー専門委員会」の主要な検討課題

1) C-ITS (Collaboration on ITS Communication Standard)を通じた国際連携

 図1はITS関連の国際標準化の動向を一覧した図です。国際標準化機関の他、日欧米など各国のフォーラム的な活動を含め、乱立するITS通信標準に対し、開発リソースの効率化を図り、ユーザーの無用な混乱を避けることが望まれます。各標準化機関の作業分担と共同作業の設定を行うことを狙い、ITU-T/RやISO等では、ITSの通信に関する標準化活動の国際連携と協調のためのC-ITS (Collaboration on ITS Communication Standard)というグループを構成し、2011年12月より活動を開始しています。C-ITSは日本国内での自動車関連の業界関連機関での認知度はまだ低いようですが、これまでに13回の会合が開催され、TTCはITU-Tの関連するITS通信の要求条件の検討整理の視点から活動を支援してきました。

 2016年7月5日には、TTCがホストしてCITS会合を日本で開催する予定です。   C-ITSのレポートは、ITU-Tから要求条件文書であるHSTP-CITS-Req (Global ITS Communication Requirements(Version 1)2014)として発行されています。
 2016年7月5日には、TTCがホストしてCITS会合を日本で開催する予定です。  C-ITSのレポートは、ITU-Tから要求条件文書であるHSTP-CITS-Req (Global ITS Communication Requirements(Version 1)2014)として発行されています。

2) 災害時のITS応用

 東日本大震災の際に、避難所において情報通信手段の確保が困難であった経験から、災害時に自動車を情報通信のインフラとするための実証実験などの取り組みが進められています。自動車は発電能力を持ち移動可能であることから、更にネットワークにつながることで災害時の情報通信インフラとして有望と考えられます。

 「コネクテッド・カー専門委員会」では国内での実証実験などを調査し、いくつかの取り組みを「災害時の自動車を用いた情報通信システム(略称:VHUB)」として整理しています。このシステムをアジア各国がリスクとして共有する自然災害時に利用できるシステムとして、ASTAP (アジア・太平洋電気通信標準化機関)へ提案を行っています。アジア諸国における災害時情報通信インフラのユースケースを調査し、そのニーズを基にシステムの要求条件を整理し標準化を進める予定です。

3) ITSに関するセキュリティ

 自動車に関するリコールの約3割はソフトウェアに関連するトラブルであると言われていますが、現行のリコールに関する制度では全車両の回収が必要であり、このコストの低減は社会的要請となっています。そこで自動車の状態・状況を遠隔にて正しく把握しソフトウェアを安心して更新する手段が必要となります。遠隔での自動車の状態把握については、日欧米において各種の取り組みがなされており、「コネクテッド・カー専門委員会」ではこれらを調査するとともに、クルマの通信に関するセキュリティインタフェースの検討を進めます。

4) ITSにおける車載インタフェース

 自動車がネットワークに接続し、各種アプリケーションを実現するためには、車載ゲートウェイやアプリケーションインタフェースが必要となります。「コネクテッド・カー専門委員会」では、ISO、ITU-T、W3Cなどの標準化動向等を調査します。

 ISO TC204のWG16では、CALM (Communications, Air Interface, Long and Medium range) の標準化を行っています。CALMは、ITSにおける中広域無線通信メディアを車両走行中もシームレスに使えるようにするものです。

 ISO TC22では、TC204と連携して車載ゲートウェイ関連の標準化を検討しています。

 ITU-Tでは、SG12において自動車内でのハンズフリー通信のための音声インタフェース、SG16ではITSのための “Vehicle Gateway Platform” 、SG17ではITSのためのセキュリティガイドライン等の検討を行っています。更にSG16では “F.AUTOTAX”(Taxonomy for ICT-enabled motor vehicle automated driving systems) として自動運転に関するICT用語の整理を行う予定です。

 W3C (World Wide Web Consortium) では車載インタフェースを用いたWebアプリケーションインタフェースの検討を行っており、2015年2月5日にAutomotive Working Groupを発足しました。車載インタフェースについては、関連団体が連携しながら標準化活動を行っており、SWGとしても継続して動向調査を行う予定です。

 「コネクテッド・カー専門委員会」では、今後も動向調査を継続し、標準化ニーズが明確になったテーマについては標準化作業・審議を行います。

 

「コネクテッド・カー専門委員会」委員募集

 5月30日より「コネクテッド・カー専門委員会」の委員募集を開始いたしました。詳細は下記のページをご参照ください。

 多数のご参加をお待ち申し上げます。