マエダブログ

マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

ギガビットDSL高速通信規格G.fastのスペクトル適合性確認

 梅雨が続き、日照時間が少ない今年ではありますが、二十四節気の小暑(しょうしょ)になり、日々暑さが厳しくなり、日本のあちらこちらで真夏日を記録したという報道が聞かれます。夏の花の百合が見頃となる季節になりました。

 7月3日にITU-T SG15の第4回会合が終了しました。SG15では、既設の電話回線を用いたブロードバンドアクセス技術であるG.fastの検討が進展しており、G.fastの主要勧告であるG.9700、G.9701は2014年12月に勧告化されています。G.fastは106MHzまでのスペクトルを用いて、上り/下りで合わせて約1Gbit/sの伝送レートを実現するDSL (Digital Subscriber Line) 技術です。G.fastは、主にFTTR (Fiber To The Remote terminal) またはFTTB (Fiber To The Building) の構成が適用範囲と考えられ、光ファイバの引き込みが困難な家庭および携帯基地局等に対して、ラスト数百メートルのブロードバンド回線を提供することが期待されています。

 FTTRシステムは、光ファイバを電話局から加入者宅の最寄の地点まで敷設し、そこに設置した終端装置 (FTU-O) から加入者側の終端装置 (FTU-R) までに既設の電話回線を利用するシステムです。FTTC (Fiber To The Curb) 、FTTdp (Fiber To The Distribution-Point) と呼ばれるシステムもFTTRの一形態です。また、FTTBは、この終端装置 (FTU-O) をユーザービル内に設置したものです。

 TTCのアクセス網専門委員会 (2014年にDSL専門委員会と情報転送専門委員会の光アクセス網SWGを統合) では、国内で使用するDSL方式が他の既存サービスなどに影響せず共存できるかを確認しています。他の既存サービスなどに影響せず共存できることを“スペクトル適合性がある”と呼んでいます。

 TTC会員から提案された各種DSL方式はスペクトル適合性があると認められれば、その方式を「スペクトル適合性確認結果報告書」に記載し、TTCホームページで公開しています。「スペクトル適合性確認結果報告書」に記載されている方式は、総務省がそのDSL方式を国内で使用することを認める場合の技術的な根拠の一つになっています (私有ビル内の設備などは規定の対象外) 。

 TTCに対して、2015年6月に、華為技術日本株式会社よりG.fastシステム (VDSL2フレンドリーPSD方式) の提案があり、提案方式の国内におけるスペクトル適合性をアクセス網専門委員会で検討してきました。その結果、委員会では、提案方式のスペクトル適合性があると認められ、「スペクトル適合性確認結果報告書」にG.fastシステム (VDSL2フレンドリーPSD方式) を追加する改定を行いました。

スペクトル適合性確認結果報告書 (2015年7月17日版) 

 また、スペクトル適合性の確認方法などはTTC標準 JJ-100.01 「メタリック加入者線伝送システムのスペクトル管理」に記載されています。

 G.9701で標準化されているG.fastは、2.2MHz~106MHzのスペクトルを使用します。華為技術日本株式会社から提案のあったG.fastシステム (VDSL2フレンドリーPSD方式) は、30MHz以上のスペクトルは標準と同様に使用しますが、30MHz以下のスペクトルではVDSL2方式と同じスペクトルのみを使用する方式です。30MHz以下では、既にスペクトル適合性が認められているVDSL2方式と同じにして適合性を確保しています。30MHz以上は、これまでのDSL方式では用いられておらず、DSL以外の他のシステムに対しても、総送信電力も小さいことから影響ないと判断しています。

 TTCのアクセス網専門委員会は、高速光アクセス網、次世代モバイルアクセス網、将来アクセス網の標準化検討、標準案作成および調査を行う次世代光アクセス網サブワーキンググループ (SWG2401) と メタリックおよびハイブリッドアクセス網の標準化検討、標準案作成および調査を行うハイブリッドアクセス網サブワーキンググループ (SWG2402) で構成されます。

 本件に関心のある方もしくはTTCへの専門委員会に関心のある方はTTCのホームページをご覧ください。