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TSAG会合速報:量子通信が標準化課題に

2018年12月18日

 12月10日から14日まで、ITU-TのTSAGTelecommunication Standardization Advisory Group:電気通信標準化諮問会議)会合がジュネーブで開催されました。今回のTSAG会合は、ITU-Tの2017年~2020年研究会期における第3回会合です。私は、TSAGにおける標準化戦略ラポータグループのラポータとして、総務省の参与辞令を受けて参加しました。

 本ブログでは、TSAGの全体概要と前田が共同ラポータとして対応した標準化戦略ラポータグループで審議したSDGs(Sustainable Development Goals)と戦略的標準化重点課題、そして、中国提案による“Quantum Information Technology for Networks (QIT4N)”に関する新フォーカスグループ(FG)の新設の是非を議論した「量子通信」に関するアドホックグループの会合結果を中心に、TSAG会合の結果概要を速報します。 

 本ブログの目次構成は以下の通りです。

 TSAG会合全体の結果については、TTCの国際連携アドバイザリーグループのTSAG対応タスクフォース会合で報告・審議しますので、関心のある方はTTCにお尋ねください。

1.TSAG全体概要

 今回のTSAG会合には36か国から約120名の参加者がありました。日本としては、総務省国際戦略局通信規格課の戸田公司国際情報分析官を日本団団長として、今回は国内各社・団体(NICT、NTT、KDDI、日立、住友電工、三菱電機)から11名の現地参加者と、加えて、量子通信アドホックには佐々木雅英氏(NICT)、SG9議長として宮地悟史氏(KDDI)にリモートでご対応いただき、またNEC、富士通、パナソニック、日本ITU協会におかれましては、リモート参加で会合を傍聴されたようです。

 TSAG会合では、ITU-Tにおける全てのSG (Study Group) の標準化活動を検証するとともに、会議規則や他の標準化機関との連携に関する手続きなどの見直しを行い、今後ITU-Tが取り組むべき標準化課題の分析を基に、次会期に向けたSG体制案の検討を行い、2020年のWTSAへの提案を検討します。

 TSAGでの会合構成は、全体審議及び最終判断を行うプレナリー(第一日目と第五日目)とその間の3日間で課題毎に詳細検討を行うラポータグループ(RG)会合で分担して審議を行いました。今回の第三回TSAG会合では、ラポータグループは以下の6つの課題で役割分担し、各ラポータが議事運営を行いました。また、量子通信に関するFG設立是非の審議については、早朝、昼休み、夕方の公式時間外を活用して、量子アドホックグループ(議長:Arnaud Taddei氏(アメリカ、シマンテック)を構成して、4回の会合を開催して集中審議しました。

① 作業計画・体制RG(Work Programme and structure)
 ラポータ:Reiner Liebler氏(ドイツ、連邦ネットワーク規制庁); 全てのSG (Study Group) の活動報告を検証するとともに体制への影響を分析し、2019年9月のTSAG第四回会合から、WTSA-20に向け、次会期のSG構成案の検討に反映させます。

② 作業方法RG(Working Methods
ラポータ:Steve Trowbridge氏(米国、ノキア); ITU-Tにおける様々な作業手順やルールを規定するAシリーズ勧告の維持管理を行います。今会期では、SGの作業方法を規定する勧告A.1と補助文書の規定を行う勧告A.13の改訂を検討しています。

③ 標準化協調強化RG(Strengthening Cooperation/Collaboration)
ラポータ:Glenn Parsons 氏(カナダ、エリクソン); 他の標準化機関との協調の在り方や強化策について検討を行います。今会期では、他の標準化機関の仕様を参照引用するための手順(勧告A.5)や他の標準化機関の文書の一部を組込むための手続き(勧告A.25)の改訂を検討します。

地域グループRG(Regional Group
ラポータ:Kwame Baah-Acheamfuor氏(ガーナ、国家通信局); 全権会議PP-18で承認された勧告8に関する課題で、各SGが設立するRegional Groups(地域グループ)の設立、参加、解散に関わる基準の明確化を図ります。

WTSA決議レビューRG(WTSA Resolutions Review)
ラポータVladimir Minkin氏(ロシア、国立無線通信研究所); WTSAの決議の検証を行うとともに、PP(全権会議)の決議とWTSAの決議との効率化作業が課題です。

標準化戦略RG(Standardization Strategy)
ラポータ:共同ラポータ ; CTO会合や各SGからの提案を基に、標準化戦略の観点からの今後の重点課題を検討しています。共同ラポータは各産業界(通信オペレータ、ベンダ、OTT事業者、主管庁)から前田(日本)を含む7名が指名され、議長役は順番に持ち回る運営方針です。TSAG第一回と第二回会合は前田がRG議長を担当し、今回の第三回会合のRG議長はStephen Hays氏(カナダ、エリクソン)、次回第四回のRG議長はDidier Berthoumieux氏(フィンランド、ノキア)が指名されました。

2.標準化戦略ラポータグループ

① SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)

 日本から寄書として、ITU-T SG(Study Group)の課題(Question)とSDGsの17のゴールとの対応のマッピングを示すとともに、各SGの今後の作業項目に対してどのSDGsに貢献できるかを明確にすることが標準化戦略上重要であることを提案しました。

 米、英、ブラジル、サウジアラビアの他、SG2、SG3、SG16議長等からは日本提案に対して賛同の意見があった一方で、SG13議長、SG15議長からは、技術課題を中心に検討しているSGにとって、本マッピングを行う基準が良く分からないという意見があり、マッピングのガイドライン作成が課題として認識されました。SDGsと標準化課題とのマッピングについては、ISOやIECでも行っていますが、いずれも主観判断に依っており、マッピング適合判断の客観的なガイドラインの検討が期待されます。マッピングガイドライン案については日本からの寄書提案が期待されており、今後の標準化戦略RGの電子会議(2ヶ月に1回程度開催)や次回TSAG会合で議論していくことになりました。

② 標準化戦略的重点課題

 標準化戦略RGでは、CTO会合での提案や各SGとの意見交換を通じて、ITU-Tにとっての標準化戦略上の重点化課題の整理(TD398R1)を行い、表1に課題をリードするべくSGとの関係をまとめました。前回TSAGの重点化課題に対して4つの課題(課題12~15)が追加されました。このリストは全SGにフィードバックされ次回会合までに、今後、どの課題が重要で、どのような体制で検討すべきかを検討していく予定です。同様に、TTCでの検討の進め方についても議論していく予定です。

3.量子通信アドホック

 今会合で、中国寄書により、「ネットワークのための量子情報技術」(Quantum Information Technology for Networks:QID4N)に関するFGの設立提案がありました。ITU-Tでの量子通信に関する課題の扱い方針について、アドホックグループを構成し、今後の進め方を審議しました。

① 検討背景

② 今会合の合意内容

③ 審議結果の意義

4.今後の予定

① TSAG会合

標準化戦略RG中間会合(電子会議)

おわりに

 ITU事務局は12月22日から1月6日まで年末年始休暇ということです。ジュネーブの街中はクリスマスセールとクリスマスイルミネーションでにぎわっていました。写真はレマン湖畔に立ち並ぶ有名ホテルのクリスマスイルミネーションの私のベスト3です。

 本年もTTCマエダブログをお読みいただきありがとうございました。新年も引き続きよろしくお願いいたします。皆様、良いお年をお迎えください。

 

クリスマスイルミネーション1
クリスマスイルミネーション2
クリスマスイルミネーション3

 


 参考資料

download.gif資料1:量子情報技術に関するチュートリアル資料(PDF:6MB)

 

表1. 標準化戦略上の重点化課題候補と関連ITU-T SGとの関係

重点化課題候補

関連ITU-T SG

1) OTT services and the economic impacts, Cross-industry collaboration

SG3、SG2、SG9、SG16、SG17

2) VoLTE/ViLTE interconnection and adoption of ENUM for IMS interconnection 

SG11

3) Intelligence for network automation, augmentation and amplification

SG13、SG9

4) Open APIs, enabling third parties to access and build on network capabilities to develop innovative, reusable services

SG13、SG11

5) Realizing 5G/ IMT-2020 vision

SG13、SG2、SG5、SG11、SG12、SG15、SG16、SG17、SG20

6) Gigabit-speed broadband access services and networks

SG15、SG9

7) Data Center Interconnection for OTT and vertical industries

SG15、SG11、SG9

8) Augmented reality & virtual reality, video services

SG16、SG12、SG11、SG9

9) Accessibility by design, mainstreaming the consideration of needs of persons with disabilities and other persons with specific needs to build inclusive ICT solutions

SG16、SG2

10) Security, Privacy and Trust

SG17

11) Analytics, supporting the development of evidence-based, data driven services

SG20、SG17

12) Intelligent network management towards future networks

SG2

13) Environmental efficiency of emerging technologies

SG5

14) Digital health

SG16

15) Interoperable Quantum safe communications/ Quantum Resistance

SG17, SG13

 


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