マエダブログ

マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

第11回CJK標準化会合にて国際連携の絆が深まる

 中国、日本、韓国の3カ国の情報通信産業の成長と発展のための情報交換に関するMoU(Memorandum of Understanding:覚書)に基づく、情報通信の標準化分野における協調会合:CJK標準化会合(CJK IT Standards Meeting、以下CJK会合)があることはご存知でしょうか?

  本CJK会合は、中国、日本、韓国の標準化機関 (SDOs : Standards Development Organizations) の集まりで、中国はCCSA、日本はARIBとTTC、韓国はTTAが参加しています。アジアの主要な標準化関係者が集まり、関心の高い技術分野に関する標準化活動について意見交換し合うとともに、ITUでの標準化活動に可能な範囲で協調し、自分たちの主張を会合結果に適切に反映していくことを主な目的とした集まりです。

  CJK会合は、全体会合(プレナリー)とCJKの標準化機関の代表者(Head of Delegation)会合により全体の連携方針を決定し、個別の課題については作業グループ(WG)会合で実施されます。CJK全体会合は、第一回は2002年に韓国で開催され、おおよそ年一回の頻度で、CJKの3カ国が持ち回りでホストしてきました。

会合名
開催国
開催地
開催期日
第1回CJK標準化会合
韓国
Korea Kyounggi province
26 June, 2002
2CJK標準化会合 
日本
東京
7 Nov, 2002
第3回CJK標準化会合
中国
Beijing
3 Nov, 2003
第4回CJK標準化会合
韓国
Seoul
5-7 July, 2004
5CJK標準化会合 
日本
東京
28-30 March, 2005
第6回CJK標準化会合
中国
Hangzhou
10-12 April, 2006
第7回CJK標準化会合
韓国
Jeju
9-11 April, 2007
8CJK標準化会合 
日本
沖縄
31 March - 2 April, 2008
第9回CJK標準化会合
中国
Zhangjiajie
8-10 April, 2009
第10回CJK標準化会合
韓国
Gyeongju
7-9 April, 2010
11CJK標準化会合 
日本
宮崎
14-16 March, 2012

  第11回の今会合は、ARIBとTTC の共同ホストにより、宮崎県宮崎市のシーガイヤコンベンションセンターで開催されました。当初は2011年4月に北海道札幌市での開催を計画していましたが、昨年3月の東日本大震災の直後ということで、今回の宮崎会合に延期変更することになりました。

  過去のCJK会合資料は、TTCホームページの「国際連携」の「CJK Standards meeting」の項目でご覧いただけます。

  今回のCJK会合の第一の特徴は、国連の標準化機関であるITUとインドの標準化組織であるGISFIをゲストに迎え、従来の日本、中国、韓国の3カ国からより広範囲での標準化活動を見据えた議論を行ったということです。TTCは、インド市場の急速な拡大等を踏まえ、標準化活動におけるインドとの連携強化を戦略的に行っております。

  ITUからはITU-T局長のJohnson氏とITU-TのSGマネジメント主任部長のJamoussi氏、ITU-R次長のLeite氏が参加しました。CJK会合のオープニングプレナリーではITU-T局長のメッセージが述べられました。そのスピーチの中で、ITUの標準化会議におけるCJKの寄与が、財政的な貢献額、寄書数、参加者数の点で全体に占める割合が大きくなり、CJKの影響力の拡大と標準化活動における重複回避など円滑な相互連携の必要性が認識されています。

  また、M2Mについても強い関心が述べられ、ITUを除いたSDO間の連携によるoneM2Mの動きに対して、ITUとしてもoneM2Mに関与し、oneM2Mの組織運営のための事務局機能をITUが提供する用意がある、との表明がありました。この提案の影響を含め、oneM2Mの設立準備会合の中で議論していく予定です。

  ITUとCJKは昨年の7月に相互連携のための覚書(MoU)を締結し、その具体的な連携課題の合意が課題であり、今会合で議論することにしました。その結果、M2Mとダイナミックスぺクトラムアクセス、将来移動通信システム、スマートグリッド、クラウドコンピューティングとセキュリティ、環境と気候変動、を共通課題として抽出しました。

  ITUは今回、CJK会合に初参加しましたが、その成果について、ITU-T Newslogで報告しています。TTCでは、これらの共通課題に対して、今後関連の専門委員会およびアドバイザリーグループで対応することになります。

  また、TTCはインドのGISFIとは昨年の8月に基本合意書(LoI)を締結しましたが、GISFIからはCJKの連携会合にインドが加わりたい、という非公式ながら申し出もあり、今会合にはゲストの扱いで会合参加してもらいました。

  GISFIのCJK会合への参加については、GISFIがインド政府による正式な標準化機関として承認されるのを確認した後が望ましいということから、当面は情報交換の関係から交流を開始する予定です。近い将来、インドがCJKに加わり、CIJKとなる可能性は十分にあり、日本にとって、中国に続く大きな市場となる可能性を有するインドとの関係を築くことに貢献できればと思います。

  今回のCJK会合のもう一つの重要な議論ポイントは、CJKとしての新しい検討課題への取り組みです。今まで、CJK会合には三つの作業グループ(WG):

UNIOT-WG: Ubiquitous Networking in support of Internet of Things、

IMT-WG: International Mobile Telecommunication、

NID/USN-WG: Network ID and Ubiquitous Sensor Network

が有りましたが、今会合でNID/USN-WGは当初の目的を達成したので終了すると共に、新規に情報セキュリティWG(IS-WG)が設立されることになりました。TTCでは、今年度よりセキュリティ専門委員会を新設し活動していますので、主にこの専門委員会が対応することになります。

  M2Mに関しては、ITUにおけるM2Mフォーカスグループの検討やSDO間の連携によるoneM2Mなどの広範囲な連携が必要であり、当面はアドホックグループの形態で意見交換を継続することとなりました。

  更に、MPLS-TPに関する勧告のWTSA-12における承認に向けた連携を継続するために、新たにCJK配下にMPLS-TPアドホックグループを設けることを合意しました。

  第11回CJK会合により、新課題に向けたWGの新体制が構築され、CJK相互間並びにITUやインドとの連携がより一層強化されることになりました。私がTTCに加わって初めてのCJK会合でもあり、各組織のHoD (CCSA: Zemin Yang氏、TTA: Keunhyeob LEE氏、ARIB:若尾正義氏)との親交を深める機会ともなりました。

  今回のCJK会合運営では、ARIBとの共同ホストで、ARIBとTTCの事務局の多くの応援を得て無事に終了することができました。また、全体会合の総合議長にはARIBの佐藤孝平氏にご担当いただき、円滑な会議進行をしていただきました。さらに、日本からの会合参加いただいた皆様のご貢献を含め、関係の皆様のご支援に感謝の意を表したいと思います。