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次世代サービス基盤高度化に向けたAI活用に関する検討の推進について (「AI活用専門委員会」の設立)

  一般社団法人 情報通信技術委員会(TTC)は、3月5日に開催された第121回企画戦略委員会(委員長:瀬社家 光、副委員長:滝嶋 康弘)において「AI活用専門委員会」の設立を決定しました。

  AI(人工知能)活用によって次世代サービス基盤の高度化が見込める分野の中から、共通の技術ドキュメント作成など会員企業の協働作業が必要と考えられるテーマについて、その具体化に向けて検討することが目的です。

  また、世界最先端のAI活用を推進し、世界中から知見を収集し情報発信することで、会員の新たなサービス創出や最先端のビジネス環境の構築を促進することも目的です。

 次世代サービス基盤高度化に向けたAI活用に関する検討の推進について(「AI活用専門委員会」の設立)

1.背景

  今後、5Gの普及とともに、ネットワークの多様化・高度化が急速に進むと予想されています。その中で、将来の情報通信サービス(次世代サービス)において、その基盤の柔軟性・最適化を高めるためにAIを活用することが必要だと考えられています。AI活用が見込める例は次のとおりです。

  • 情報通信アプリケーションの高度化
  • サービスデリバリー速度の大幅向上
  • ユーザに新しい経験や発見の提示
  • 設備投資、運用・保守コストの低廉化
  • 高度なサービスの自動運用と予防保守の実現
  • 安心で信頼できるICT環境の提供  等など

  情報通信サービス基盤の高度化にAIを活用する検討は、世界的にも始まっています。2017年11月にITU-Tが、テレコムへの機械学習応用を検討するFG-ML5G(Focus Group on Machine Learning for Future Networks including 5G:5Gを含む将来網のための機械学習)を設置しているのを始め、2017年2月にETSIは、AIのテレコム運用管理への適用をめざすISG ENI(Industry Specification Group 'Experiential Network Intelligence')を設置しています。通信キャリアの新ビジネスモデルなどを検討しているTM Forumは、顧客エクスペリエンス管理、サービス管理、網管理へのAI応用などを実証デモで検討するなど活発な活動を行っています。マイクロソフト・リサーチは、ネットワーク計測データをオープンデータで公開し、データ解析により障害予測の研究を推進しています。

2.活動概要

  今後、TTCではAI活用専門委員会に参加する会員などを募集し、活動内容が具体化し、メンバー(概ね5社以上)およびリーダが決まった検討テーマから順次SWGを設置し検討を開始する予定です。本専門委員会における活動内容の検討にあたり、AI活用により次世代サービス基盤の高度化が見込める分野として、現時点で考えている分野は次のとおりです。

AI活用分野 AI活用の目的 取組概要(案)
①エッジ型アプリケーション高度化
サービス基盤機能の高度化
・オープンイノベーションの活用を含むさまざまなサービスの出現に対応するための、情報通信基盤機能の課題、AI活用の可能性を検討する。
・オープンイノベーションを含め組織連携による次世代サービス創出を支援するとともに、ユースケースを発掘する。
②サービスデリバリー・運用自動化
サービス提供の高度化と基盤リソース最適化
・次世代サービスの利用者および提供者に対する、サービス提供の柔軟化、迅速化
・サービスの安定提供と基盤資源の最適化を行うための課題、AI活用の可能性を検討する。
③設備障害予測・保守効率化
基盤リソースの保守保全業務の高度化
・基盤を構成する要素(ハード・ソフト)の障害復旧および基盤設備の安定的提供に関する課題、AI活用の可能性を検討する。
・設備障害の稀有データなどのAI活用への可能性を検討する。
④サイバーセキュリティ対策
セキュリティ業務の高度化
・サイバーセキュリティ業務における課題、AI活用・各種自動化の可能性、AI技術利用に対する課題、AIを利用した攻撃への対策を検討する。
・攻撃の対策や安全なAI技術利用のあり方などを事業者間連携にておこなう。

  現在、オープンイノベーションやデジタルトランスフォーメーションによる新しいビジネスや情報通信サービスの展開に伴い、標準化活動の範囲も従来の標準文書を作成するだけでなく、これらを含むオープンイノベーションを技術面・ビジネス面から支えるあらゆる活動に広がっています。同時に、その成果物についても、得られるあらゆる知見、発見、情報を包含する方向に変わっています。そして、関わるプレーヤーについても、従来の技術面だけでなく、技術とビジネスの両面から価値創造・事業戦略を企画する方々へと広がっています。


  このような現状を踏まえ、AI活用専門委員会の成果物については標準とは限らず会員の事業に寄与するものとし、あらゆる知見、発見、情報を包含することを考慮します。また、検討に当たっては、会員内の当該テーマに関するAI活用事業・研究開発に携わる人材の他、知見を有する大学関係者などにも参加をお願いする予定です。さらに、専門委員会及びSWGへの参加は、当該SWGの活動(ユースケースやベストプラクティスなどの調査、分析、まとめ作業など)に貢献することを前提条件といたします。

【お問い合わせ先】
TTC事務局 企画戦略担当
斧原 晃一
電話:03-3432-1551(代)
電子メール:onohara@ttc.or.jp

(参考)AIを巡るさまざまな活動

組織 概況
IEEE
・「AI Global Initiative for Ethical Considerations in AI and AS」がELSI課題を中心に論点整理。Ethically Aligned Design (EAD) ver.2発行。
・EADで出た論点に基づきP7000 ~ P7010の11件の標準化プロジェクト設立済。
ITU
・ITU-T SG13: 11月会合でテレコムへの機械学習応用を検討するFG-ML5G設立。第1回会合1/29~2/2。
ISO/IEC JTC 1
・SC42 (AI): JTC1総会(2017/10)にて設立合意。WI「人工知能の概念と用語」「機械学習を用いた人工知能システムのフレームワーク」承認。
BSI(英国)
・BS8611:2016 (倫理的ロボットの設計ガイドライン) の改定を関係者が議論開始。
ETSI
・ISG ENI: AIのテレコム運用管理への適用をめざし2017/2月設立
TM Forum
・顧客エクスペリエンス管理, サービス管理、網管理等へのAI応用を実証デモなどで検討中。
(OSS系)
・多数のオープンソースコミュニティ
総務省
「将来のネットワークインフラに関する研究会報告書」公表(2017/7月)。将来必要な主要技術として自動オペレーション技術(AIによる保守・運用技術)を挙げ、AIに対するデータ入力仕様の標準化や適用ルール等の規定の整備、効果的にAIを学習させる手法、電気通信事業者間で協調できる仕組みを提言。