マエダブログ

マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

IoTの新たな国内外の動向

 IoT(Internet of Things)に関する議論は古く、国際標準化を扱う国際電気通信連合(ITU)では、2005年にIoT(Internet of Things)に関する最初の報告書を出版しており、いつでも何処でも誰とでもつながるIoTを支えるネットワークの必要性を提言してきました。近年になり、欧米を中心とする先進各国では、産業・製造業の再躍進を目的とする国家およびグローバルレベルの戦略的取り組みが始まってきました。蒸気機関による産業革命を第一波とするのであれば、その後、インターネット革命が続き、今回の波を、その後の第3次または第4次産業革命と位置づけ、米国ではインダストリアル・インターネット、ドイツではインダストリー4.0といわれる活動が活発化しています。

 日本においては、最新のIoT技術を使って製造業など産業分野を革新する試みが動き始め、10月23日に経済産業省と総務省が共同で「IoT(モノのインターネット)推進コンソーシアム」を発足させました。日本にもようやく第4次産業革命の波がやってきたといえます。

 ITUの電気通信標準化部門(ITU-T)では、10月19日~23日にジュネーブにて、「IoTとその応用」に関する新たな研究委員会SG20が発足し、第一回会合が開催されました。

 本ブログでは、IoTに関する最近の国内外の動きについて、解説させていただきます。

 

1. 国内動向;「IoT推進コンソーシアム」の発足

 IoT推進コンソーシアムは、10月23日に東京都千代田区の帝国ホテルで、800名を超える参加者を集め、発足総会が開催されました。本コンソーシアムの会長には慶應義塾大学 環境情報学部長の村井純教授、副会長にはNTT代表取締役社長の鵜浦博夫氏、日立製作所 執行役会長 兼 最高経営責任者の中西宏明氏の2人が就任され、また、15名の有識者が運営委員として就任されました。

 総会で村井会長は、「IoTは縦を横にするもの。IoTは製造、医療、エネルギー、農業、教育など様々な領域に恩恵をもたらす。しかし、それぞれの領域の技術が“縦”に仕切られてバラバラでは社会全体にIoTの価値・恩恵を届けることができない。IoTの技術は企業や業種を超えて“横”に展開していくもの。横の力を生み出すためにはオープン化、技術標準化が重要」とご挨拶されました。 また、来賓として、高市早苗総務大臣、林幹雄経済産業大臣がご挨拶され、高市総務大臣は、「IoTのような成長分野での投資拡大と雇用拡大はアベノミクス最大の課題である。今年度内には、本コンソーシアムの成果を社会の隅々まで行き渡らせることを目指したい」、林経済産業大臣は、「自前主義に陥ることなく、企業同士が互いに手を取り合ってIoTを推進して欲しい。政府も省庁間の縄張りに関係なく、力を合わせてこの取り組みを支援する」と発言されました。

 IoT推進コンソーシアムは、

(1)「技術開発ワーキンググループ(スマートIoT推進フォーラム)」:IoT関連技術の開発や実証、標準化を行う組織

(2)「先進的モデル事業推進ワーキンググループ(IoT推進ラボ)」:ビジネスモデルの創出や規制改革などの検討提言を行う組織

(3)「専門ワーキンググループ」:課題に応じて設置する組織(当面、IoTに関わるセキュリティ、プライバシーを考える組織を設置)

の3つの組織を設置、IoT推進ラボは10月30日に第1回の会合を開催し、スマートIoT推進フォーラムは2015年内に開催される予定です。

 本コンソーシアムは、オールジャパンによる産官学連携でIoTに関する技術開発や新規ビジネス創出を推進するための組織であることが印象付けられました。TTCは、本コンソーシアムの情報を収集するとともに、スマートIoT推進フォーラムを通じて、IoTにおける通信プラットフォームに関する標準化検討に貢献できるよう体制を強化していく予定です。

 

2.国外動向;「IoTとその応用」に関するITU-T SG20の第一回会合開催

 2015年6月のITU-T電気通信標準化アドバイザリーグループ(TSAG)では、IoTに関する新SGを設立することを決定しました。IoTは、昨年10月の全権会議(PP14)決議197や2015年5月に開催されたITU理事会でも重要課題として関心が高まっていた課題であり、TSAGではSG設立は時期尚早であるという懸念が米国や英国などから出されましたが、20カ国を超える多くの国が新SGの設置に賛成を表明したことから、新SGの設立が合意されました。ITU-Tにおいて、世界電気通信標準化総会(WTSA)以外の機会で新SGの設立を決定したのは初めてのことでした。SG20のタイトルは「IoT and its applications including smart cities and communities (SC&C)」です。SG20のミッションは「IoTとその応用」に関する検討で、当面はFG-SSCが検討してきたスマートシティへの応用を検討する予定です。

 新SG20の第一回会合は10月19日から23日まで、ジュネーブで開催されました。SG20のマネジメントチームとして、SG議長には、UAEのNasser Saleh Al Marzouqi氏が就任し、SG副議長およびWP議長・副議長にはスペイン、サウジアラビア、アルゼンチン、中国、イタリア、ロシア、韓国、日本、エジプトから指名されました。SG20の課題構成は、既存のSG5、SG13、SG16などからIoTに特化した課題を移行することで構成し、図1のSG20の課題構成を合意しました。SG20は、IoT技術に関するネットワーク課題を扱う作業部会(Working Party)のWP1と、スマートシティとコミュニティ(SC&C)のサービスとアプリケーションを扱う作業部会のWP2とで構成され、WP1に課題2,3,4が、WP2に課題5と6が含まれ、用語定義などの共通課題を扱う課題1はSG直下の組織構成となりました。SG20の各課題の取りまとめを行うラポータについては表1に示します。

 WP2が扱うSC&Cのテーマは、FG-SSCが検討してきた成果物をベースに勧告化を図ることを目指しています。例えば、勧告草案Y.SC-OpenData:Framework of Open Data in Smart Cities(スマートシティにおけるオープンデータのフレームワーク)、Y.SC-interop:Identifier service requirements for the interoperability of Smart City applications(スマートシティのアプリケーションの相互運用性を確保するための識別サービスの要求事項)、Y.frame-scc:Framework and high-level requirements of smart cities and communities(スマートシティ&コミュニティのフレームワークと大所高所からの要求事項)などの多くの作業計画を合意しました。これらの課題は中国やイタリアが熱心であり、国際議論の動向を把握するとともに、日本として取り組むべき課題の明確化を含め、今後の検討の進め方を議論しなければいけない領域であると考えます。

図1.SG20構成
図1.SG20構成

 

表1.SG20の課題ラポータのリスト

SG20課題
ラポータ名
Q1/20 (PLEN)
Research and emerging technologies including terminology and definitions
Sébastien ZIEGLER: ラポータ
Mandat International, Switzerland
Olga CAVALLI: 副ラポータ
CCAT LAT, Argentina
Q2/20 (WP1/20)
Requirements and use cases for IoT
Marco CARUGI: ラポータ
NEC Corporation, Japan
Safder NAZIR: 副ラポータ
Huawei Technologies, United Arab Emirates
Q3/20 (WP1/20)
IoT functional architecture including signalling requirements and protocols
  
Omar ELLOUMI: ラポータ
Alcatel-Lucent, France
Ayman ELNASHAR: 副ラポータ
Emirates Integrated Telecommunications Company, United Arab Emirates
Asit KADAYAN: 副ラポータ
Ministry of Communication & IT, India
Q4/20 (WP1/20)
IoT applications and services including end user networks and interworking
  
Abdulhadi ABOUALMAL: 共同ラポータ
Etisalat, United Arab Emirates
Gyu Myoung LEE: 共同ラポータ
KAIST, Korea
Jia XIONGWEI: 副ラポータ
China Unicom, China
Q5/20 (WP2/20)
SC&C requirements, applications and services
   
Giampiero NANNI: 共同ラポータ
Symantec, United Kingdom
Tania MARCOS PARAMIO: 共同ラポータ
AENOR, Spain
Xueqin JIA: 副ラポータ
China Unicom, China
Jun Seob LEE: 副ラポータ
ETRI, Korea
Q6/20 (WP2/20)
SC&C infrastructure and framework
Olga CAVALLI: ラポータ
CCAT LAT, Argentina
Zhen LUO: 副ラポータ
Fiberhome Technologies Group, China

3.IoTを活用した事業展開をご検討中の皆様へ

 TTCでは早期からICTを活用した各業界のイノベーションを推進するため、業際イノベーション本部を立ち上げ、情報交換の中から、ICT分野の活性化に貢献する業際的なイノベーションの課題の発掘と戦略検討を行ってきました。また、各業界のモノがインターネットにつながるための通信プラットフォームを標準化するグローバルなプロジェクト「oneM2M」に参加し、今年、リリース1仕様書の発行に貢献しました。

 先般のCEATEC JAPAN 2015では、あらゆる業界でIoTをキーワードに事業展開を検討されており、自社の持つ技術やサービスをIoTにつなげたいという強い思いを感じました。IoTへの取組を着手された各業界の皆様や、独自の技術やサービスを持つベンチャーの皆様にも情報収集等のお役に立てるよう、いくつかの分野のセミナーを計画しております。是非ご参加頂くと共に、TTCの活動への参加検討のきっかけになりましたら幸いです。

テーマ・分野 日程 セミナー名
ヘルスケア
2015年12月2日
「e-Health標準化の最新動向~脳情報の活用期待~
インダストリアル・インターネット/oneM2M
2015年12月18日
「IoT & インダストリアル・インターネット・シンポジウム」
ホームネットワーク
2016年2月
次世代ホームネットワークシステム専門委員会活動報告
スマートカー
2016年3月
スマートカーワーキングパーティー活動報告

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