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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

光ファイバ標準が解るTTC技術レポートTR-GSup.40を制定

 日本では、平成25年3月末で約2385万の家庭に光ファイバ回線が敷設されていますが、この光ファイバケーブルはどの標準仕様に準拠しているか、ご存知ですか?

 光ファイバケーブルに関する標準については、ITU-T勧告群のGシリーズ勧告の中で、G.651.1、G.652、G.653、G.654、G.655、G.656、G.657があり、また、光ファイバケーブルの試験法に関するG.650.1、G.650.2、G.650.3があります。更にITU-T勧告では、これら標準化の経緯や規格体系をわかりやすく解説する光ファイバケーブルガイドラインとして、勧告の補足文書「G Supplement 40」を規定しています。また、この補足文書は、ITU-T勧告とIEC規格との関係も分かりやすく整理しています。

 今回、TTCの光ファイバ伝送専門委員会(専門委員長:中島和秀氏(NTT)、副委員長:笠史郎(ソフトバンクテレコム))では、ITU-T勧告の補足文書G Supplement 40を元に、技術レポート「TR-GSup.40」を制定しました。

 この技術レポートは、ITU-T勧告およびその他の関連文書を利用する技術者に対して、各種光ファイバとその試験法に関する標準化の経緯について概説することを目的としています。この技術レポートは、光ファイバはもとより、陸上光伝送システム、光部品、海底光伝送システム、物理基盤設備に関するITU-T規格の対応関係を把握するためにも役立つとともに、用途や使用条件に応じた光ファイバケーブルの設計や敷設に有用な情報(例えば、入力光強度に関する制限や信頼性など)についても記述しています。

 図1は、光ファイバケーブルに関するITU-T勧告群と補足文書の関係を示します。

 図1を見て頂くとわかりますように、G.650.xシリーズの勧告群は、光ファイバケーブルに関する定義と試験法を、G.65xシリーズ勧告群は、光ファイバケーブルの特性を規定しています。

 光ファイバは、ファイバの中を伝播する光の経路によってモードが分かれ、光が光ファイバのごく狭い中心部だけを通る「シングルモード光ファイバ」と、光が光ファイバの中をある程度の幅をもって通る「マルチモード光ファイバ」があります。シングルモード型はマルチモード型と比較して、伝送損失等が小さく、長距離伝送に適合するという特徴があります。

 G.651.1では光アクセスネットワークで使用されるコア径50μmのマルチ(多)モード光ファイバケーブルの伝送特性を記述していますが、それ以外のG.652、G.653、G.654、G.655、G.656、G.657では、様々な種類のシングル(単一)モード光ファイバの伝送特性を記述しています。

 テレコムの市場では、全世界的にみるとアクセス/コア系に関係なくシングルモード光ファイバがほとんどであり、種別としてはG.652の市場が主流です。2000年代にはG.655の波長分割多重(WDM)用ファイバの導入も進みましたが、ここ数年は、最も経済的なG.652を中心にシングルモード光ファイバシステムを構築する傾向が強くなっています。アクセスにおける宅内配線系では、光ファイバを自由に曲げて扱うことができるG.657の出荷が主流となっているようです。

 また、この技術レポートでは、ITU-T勧告とIEC規格との関係もまとめていますが、ITUとIECの関係を述べると、ITUでは、相互接続の担保や使用用途に応じた光ファイバの伝送特性の標準化を担当しています。一方、IECでは、ITUで標準化された光ファイバ伝送特性を参照し、それに適合した光ケーブルの製品規格を担当しています。但し、マルチモードファイバに限っては、テレコム需要が少ないため、IECが主導する形態を取っています。

 今回制定の技術レポートによって光ファイバの標準全体を見渡せますので、この機会に、光ファイバ伝送システムに関する標準化への関心を持っていただければ幸いです。

 暑さが峠を過ぎ、後退し始めるのが処暑(しょしょ)。今年は8月23日ということです。でもまだまだ暑い日が続きますので「残暑お見舞申し上げます」。先週は夏休みをいただき、夏らしい風景を求めて小旅行をしてきました。ひまわり畑の風景写真をお届けしますが、どの地域かわかりますか?