マエダブログ

マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

第19回ASTAP及び第2回WTSA-12準備会合に参加して

 10 月 24 日 (月) から 10 月 28 日 (金)まで、フィリピンのマニラに出張しました。アジア太平洋地域の38ヶ国が加盟し(10月にツバルが加わり、現在37ヶ国。2011年末までにキリバス共和国が加盟予定)、電気通信に関する協調連携を図る組織としてAPTAsia-Pacific Telecommunity)があり、その中で電気通信に関わる標準化を扱う組織としてASTAPAPT Standardization Program Forum)があります。その第19回ASTAP会合がフィリピン政府の科学技術省の主催で、10 月 26 日 (水) まで開催されました。さらに引き続き 10 月 28 日 (金)まで、ITU-Tの全権会議WTSA-12(World Telecommunication Standardization Assembly 2012)に向けたAPTとしての第2回準備会合が開催されました。

  会場はマニラ湾に面したホテルSofitelで、リゾートに適した、夕日が美しい場所でしたが(写真1、2)、会議が終わった頃は陽は沈んでおり、夜に出かけるにも、ホテルはマニラの繁華街からは離れ、治安の関係もあり、ホテルからの外出にはタクシーでの移動が必須であり、結果的に、会議に十分集中できる環境でした。

写真1
写真1
写真2
写真2

1 第19回ASTAP

 APTでの標準化連携は、国連において193ヶ国を集めるITU-Tの標準化において、アジア太平洋地域の声を反映すると共に、国レベルでの投票で決議が行われる全権会議では、日本からの提案をAPT共同提案にすることができれば、約20%にあたる38ヶ国支持のパワーが得られ、国際の場で、欧州、アメリカ、アラブ、アフリカ等の地域レベルでの駆け引きが必要になる会議で、アジア太平洋地域の団結は大変に重要な意味を持つと考えられます。

 10月31日(月)、国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は、国連推計による世界総人口70億人を突破したと発表しました。アジアの人口は世界の半分を占めると言われる中、アジアの主張を世界に反映することは重要であり、日本はその指導的役割を果たさなければいけないでしょう。

 TTCはAPTのAffiliate会員で、APTの正会員である日本の総務省を支援すると共にASTAPにおけるBSG(Bridging the Standardization Gaps)の課題でのCase Study Team (CST)活動を中心に、開発途上国との標準化の普及推進の活動を展開しています。また、私は、ITU-TのSG15議長であることから、ASTAPのAdvisory Boardメンバーとして参加が要請され、ASTAP会議運営に関わっています。

 今回のASTAP会合では、私は主にITU-T関連課題のセッションに対応しました。特に、私が担当するSG15に関係する重要なトピックを紹介し、その中で、IETF(The Internet Engineering Task Force)とITU-Tとの間での懸案となっているMPLS-TP(Multi Protocol Label Switching – Transport Profile)のOAM (Operations, Administration and Maintenance)に関する2つの勧告案G.8113.1G.8113.2の勧告承認手続きについて議論しました。中国からはこれらの2つの勧告案の同時承認を求める提案が行われ、韓国からの強い支持もあり、APTとしての合同提案として合意することになりました。

 このような合意は、今まで個別の国が提案して、ITU-Tでの国際の場での議論を戦わしていますが、アジア地域として合同提案を合意できれば、APT38ヵ国の支持を背景としたより強い提案とすることができます。国際標準化戦略におけるAPTのひとつの活用の仕方といえます。

2 第2回WTSA-12準備会合

 WTSA-12のAPT準備会合については、4年に一度開催されるITU-T全権会議に向け、APTとしての合同提案に結びつけるための課題を議論しました。検討体制は以下の4つのグループ(CG: Correspondence Group)を構成します。

CG1: ITU-T作業方法に関する課題

CG2: 戦略的標準化課題とITU-T研究委員会(Study Group)構成に関する課題

CG3: 開発途上国に関する課題

CG4: 規制/政策、グローバル標準化シンポジウム等に関する課題 

 我々の最も強い関心はCG2のITU-TのSG再編であり、このSG再編はSG議長や副議長の選挙に関連しますし、今後のTTCの専門委員会構成にも密接に関係します。

 ITUの理事会で、次回のWTSAは2012年11月20日(火)から29日(木)まで、UAE(ドバイ)で開催されることが決定され、その会議に向けたAPTとしての対処案の検討が今回から始まり、来年の3月と8月にも行われる予定です。WTSA-12では、次期研究会期(2013年から2016年)のITU-Tの審議体制をどのように変えていきたいのか、日本の知恵を出していく機会です。

 私のブログでは、WTSAに向けた動向に関して、今後も発信していきますので、皆さんには関心を持っていただき、スマートグリッドやITS、M2M、IoT、グラウドコンピューティング、セキュリティ等の個別課題の標準化戦略に関しては、TTCでの議論に反映していただければと思います。

 今回のブログの最後に、写真3はASTAP会合のプレナリー議長団、写真4は歓迎レセプションでのフィリピン民族舞踊の催し、写真5はWTSA-12準備会合を終えた日本団参加者のスナップ写真です。会合参加の皆さん、ご苦労様でした。

写真3:ASTAP会合のプレナリー議長団
写真3:ASTAP会合のプレナリー議長団
写真4:歓迎レセプション(フィリピン民族舞踊)
写真4:歓迎レセプション(フィリピン民族舞踊)
写真5:WTSA-12準備会合を終えた日本団参加者
写真5:WTSA-12準備会合を終えた日本団参加者