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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

標準化教育テキスト:会議英語教材の公開開始

 靖国神社のソメイヨシノの開花宣言が23日に出されたようですが、先週末の3月22日の時点で都内で満開の桜の木を見つけました。春がそこまで来た、という実感がするこの頃です。今週末には、あちらこちらで桜を楽しむことができることでしょう。

 さて、先週の3月16日、TTCにおいて「国際競争力強化のための標準化戦略セミナー」を開催しました。本セミナーは総務省の「平成26年度 情報通信分野におけるITU-Tの標準化活動等に関する調査の請負」において、TTCが受託した調査結果の概要を報告するものです。

 受託調査の中で、標準化に関する国際会議の議事運営、議論の進めた方などに関して、標準化活動を効果的に行うために必要とされる英語表現を標準化スキルの一つとして、「使える会議英語~国際会議参加者の表現・事例集」としてまとめました。その教材を基に、TTCでは、皆さんの自己学習用にEラーニング教材として編集し、公開しました。

標準化教育テキストURL:  https://www.ttc.or.jp/publications/sdt_text

(1)はじめに

 英国ジャーナリストでEラーニング教材の英語表現の監修と音声録音をお手伝いいただいたMike Galbraith氏(Interworld Ltd.代表)は、英語表現集の使い方と今後の皆さんの勉強の心得として、「国際標準化活動において使える共通表現の知識を習得することは第一ステップではあるが、知識だけでは不十分であり、これらの表現をいつ、どのように効果的に使うかのコミュニケーション能力の取得が大切である。」と、英語表現集の使い方についての学習の心得を語っています。

(2)会議参加者の基本表現

 Eラーニング教材では、標準化活動者が国際会議の一般的な流れを理解するとともに、様々な会議シチュエーションで円滑な議論を進めるための議長及び参加者にとっての典型的な英語表現を集めています。また、国際標準化会議の流れを理解するために、標準化会議議長の立場から、様々な会議進行のシチュエーションごとに代表的な英語表現をまとめました。

 本章では、会議の参加において必要となる基本表現を複数の類似表現として示すとともに、実践的な例文をあわせて示しています。表現例において、国名などは一例であり、適宜置き換えて解釈してください。

 標準化会議に特有な英語表現とは何でしょうか? 今からおよそ25年前、私が初めてITU-Tの標準化会議に参加し、初めて発言する機会を得た時、議長から発せられた言葉が、”You have the floor.” 『何だ?floorって?』 隣にいた上司からは、『早く発言しろ!』の指示。とりあえず用意した発言原稿を読み終わり、”Thank you Mr. Chairman.”と言って無事デビューを終えましたが、”floor”が『発言権』を意味するということをその時学びました。また、議論が白熱した中で、”second”という単語が耳に入ってきた。ある提案を支持するのか、支持しないのかが議論となっているようであるが、”second”では『二番目じゃ賛成したことにはならないな』と思っていた私はしばらく会議の流れがつかめずにいた。”second”が『支持する』ということを知らなかったのである。

 国際標準化会議では平易な単語ではあるが、会議ならではの特殊な言い回し、表現があり、これらを予め知っておくことは、会議参加者にとって有益です。25年前、このような英語表現集を事前に身に付けていたら良かったのにな、との想いからこのテキストを編集しました。

 テキストでは、会議での基本的なアクションである「提案する」、「賛成する」、「反対する」、「妥協する」、「提案文書を提出する」、「質問する」などのケースにおいて使用することができる英語表現をまとめました。なお、各例文で使われる単語について日本人が良く間違いを犯す事項について、英文法的側面からの補助的情報、あるいは、提示した例文の背景や実際に使用する際の留意事項などについても解説しています。

(3)標準化会議議長の会議進行シナリオ

 この章は、私のITU-T SG15議長を2期8年間務めた実践事例を基に作成したものです。標準化会議の構成は、会議トピックや会議参加者のタイプ、参加者数などの規模によりバラエティーに富みますが、共通的な構成を想定することにより、会議の流れに沿った議論への参加と対処準備が可能となります。

 会議における議長の基本的な役目としては、会議の流れ(アジェンダ)に沿って以下の確認ポイントを踏まえ議事を進行します。

1) 開会
2) 参加者確認(定足数やメンバー確認)
3) 議題案(アジェンダ)の承認
4) 前回会議報告書の確認
5) 前回会議以降の中間会合報告の確認
6) 今回会合の目的確認
7) 審議草案の確認
8) 決議事項の承認
9) 外部関連機関とのリエゾン文書の確認
10) 将来業務と次回会合計画の確認
11) その他
12) 閉会

 標準化会議における議長は、会議の決定において最大の権限を持つ重要な役割をもちますが、「コンセンサス」を目的に会議を進行するためにも、会議参加者に対して、中立、公平に、合意形成を目指して進行することが求められます。英語が流暢である必要はなく、議長の発言は「ゆっくり」、「明瞭に」、「分かり易く」することが重要です。

 「標準化会議議長の会議進行シナリオ」の原稿は、実際のSG15会合の一例を会議シナリオの基にしていますので、会合名や資料番号などは皆さんの利用では適宜置き換えて利用してください。

 Eラーニング用のビデオ教材の所要時間は約36分です。

 このEラーニング教材が、自己学習はもとより、社内の研修などでも活用されることを期待しています。また、今後も内容の充実化を図っていきたいと思いますので、教材に対する皆様のご意見、ご要望をお聞かせいただければと思います。皆様のお問い合わせについては、事務局へお尋ねください。