標準化活動の新たな潮流への対応
~標準化会議副議長就任にあたって~

大谷 朋広
今回、標準化会議副議長を拝命いたしました。微力ながら、精一杯、務めさせていただきますのでよろしくお願いいたします。
自己紹介を兼ねまして、これまで携わった標準化活動について述べさせていただきます。振り返れば、関わり方という面で、大きく二つの活動に分けられます。一つ目が主に個人としての活動、二つ目が組織としての活動です。
一つ目の個人としてですが、ITU-TやIETFで、光ネットワーク関連の標準化活動を行ってきました。ITU-TのSG15では、当時のけいはんなオープンラボのコンソーシアム活動として、参加メンバーの皆さんと一緒に10GbEのOTNでのキャリア間相互接続のための規格化を行いました。また、IETFでは、ccamp WGで光ネットワークの制御のためのGMPLSの標準化にどっぷり浸かり、ドラフト書きに追われていましたが、4件を著者としてRFC化することができました。
その後、標準化活動からしばらく離れ、運用支援システムの開発を統括しましたが、独自で開発するのも限界があるので、TM Forumのフレームワークや標準を参考にしながら、開発を実施しました。関われば、やはり標準化にも貢献したい、という思いが少しずつ強くなり始めた矢先、異動になり、再度、標準化活動の推進を担当することになりました。
二つ目の活動は、現在も進行中ですが、個人の活動というよりは、組織として標準化にどうかかわっていくか、メンバーが標準化で貢献するにはどうすればよいか、という観点の活動となっています(ドラフト書きには追われなくなりました)。TM ForumやITU-Tに加え、新たにETSIやフォーラム活動に関わっています。その中で、総務省様受託の「革新的AIネットワークの統合基盤技術の研究開発」において、受託社のコンソーシアムで、ITU-TやTM Forumで運用自動化にAIを適用する際の標準化に関して活動を推進し、自組織を越えた活動にも発展しています。
最近は、オープン化の流れの中で、伝統的なITUやTM Forumのような標準化団体でも、データ分析のコンテストや、オープンコラボレーションのPoCプロジェクトが盛んになっています。2020年度には、TTCからも多大なサポートをいただき、ITU AI/ML in 5G Challengeの課題出題者として、日本ラウンドの運営に関わりました。TM ForumのPoCプロジェクトはCatalystと呼びますが、自組織だけでなく、コンソーシアムとして出展し、技術力のアピールだけでなく、標準化推進を円滑に進めるための啓蒙活動も行っています。
このように標準化活動を通して様々な経験を積むことができただけでなく、多くのことに気付かされました。特に、コラボレーションと着実にやり抜く心が重要だと感じています。標準化活動は、当然のことですが一人では成り立ちません。相互接続仕様だったり、共通の仕様だったりと、必ず誰かと一緒に喧々諤々の議論をしながら作り上げていく必要があります。会議の後の夕食中の議論も役に立つときもありますし、そんな中で、生涯の友人に何人も出会うこともできました。標準化活動は、スムーズにいくものはほとんどなく、様々な意見への対応や広範囲な考慮が必要で、すぐにくじけそうになります。また、標準化ですから、バックワードコンパチビリティなど、新しいものだけではなく、過去も振り返りながら、粘り強く対応することが必要で、まさに着実にやり抜く心が重要だと感じています。
標準化活動と企業の事業活動とは、近いようでもあり、遠いようでもありますが、これらを有機的に結び付けることは、これまでにも増して、経営戦略的に重要になりつつあります。そのために、もちろん個人の活動に加えて、組織的な活動をしていく必要がありますし、オープン化の進展やPoCプロジェクトの興隆の新たな流れも捉えつつ、多角的に取り組んでいく必要があります。TTCの会員企業の皆様と活動を深め、会員企業の皆様の発展に少しでも寄与できればと存じます。どうぞよろしくお願いします。