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ディジタル金融に関するフォーカスグループ設立合意:TSAG会合速報

2017年05月08日

 日本ではゴールデンウィークの期間にあたる4月29日から5月6日まで、ITU-TのTSAGTelecommunication Standardization Advisory Group)会合に出席のためジュネーブに出張しました。今会合はITU-Tの新会期(2017年~2020年)における第一回会合で、総務省参与の辞令を受け、TSAGにおける標準化戦略ラポータグループの議長を担当するのが主な目的でした。

 本ブログでは、議長として対応した標準化戦略の課題を中心にTSAG会合結果概要を速報します。 会合全体の結果については、TTCの国際連携アドバイザリーグループのTSAG対応タスクフォース会合で審議しますので、関心のある方はTTCにお尋ねください。

1)TSAGのラポータグループ構成

今会期のTSAG構成として、以下の6つのラポータグループ(RG)の設立とラポータ指名が提案されました。

 今後、RGの統合の可能性はありますが、標準化戦略(Standardization Strategy)に関するRGは、TSAGの中の最重要なRGの一つに位置付けられており、私はこの議長(ラポータ)に新たに正式指名されました。また、標準化戦略RGには、各産業界から6名のアソシエート ラポータも指名され、彼らと連携して標準化戦略の審議を推進していく予定です。

2) 標準化戦略ラポータグループの今後の予定

 私が議長(ラポーター)を務める標準化戦略RGはITU-Tにとって新体制であり、第一回会合では検討ミッションなどの組織的手続きの整理に時間を費やしました。合意された標準化戦略RGの役割は、「ITU-Tの活動分野における主な技術動向、市場、経済、政策ニーズを分析することにより、ITU-Tの標準化戦略についてTSAGと各SG(研究委員会)に助言する」ことです。 これには、ITU-T局長が企画するCTOグループ会議やTechnology Watch調査等を通じて得られる業界の意見や最新の技術動向を分析することに依り、市場動向を予測し、ITU-Tが取り組むべき新しい標準化トピックを見出し、将来の標準化の方向性や他のSDOとの協力の必要性などについて提案することが期待されています。

 標準化戦略RGとしては検討の加速を図るため、以下の中間会合の開催計画を合意しました。中間会合への参加は、アソシエートラポータの参加を前提に計画していますが、会合のオープン性を維持する観点から、全てのITU-Tメンバーに参加はオープンで、リモートアクセスの環境も用意する計画です。

 

3) 2つのディジタル金融関連フォーカスグループ新設

 TSAGオープニングプレナリーでは、2つの新しいフォーカスグループ(FG)の設立について審議されましたが、プレナリーでは決着できず、私が担当する標準化戦略RGに対し、検討の必要性や懸念事項を明確化し、審議結果をTSAGのクロージングプレナリーに報告することが求められました。

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TSAGプレナリー模様

 FG新設提案の1つ目は、eCurrency社とコンゴ、セネガル、ルワンダ、ウガンダ、ブルンディ、AICTO(Arab Information and Communication Technologies Organization:アラブの17カ国が加盟)の連名の提案で、FGタイトルは、「ディジタルフィアット通貨(注記1参照)のためのネットワークインフラ上のFG」。2つ目の提案はSG17と韓国からの「ブロックチェーンのFG」でした。

 いずれも金融関係の新しい課題であり、TSAGには専門家も少なく、ITU-Tとして標準化戦略としてどのように取り組むべきかについて、組織内の検討は不十分で、今後の議論が必要な状況です。また、最近二年間の検討が終了したばかりの「ディジタルファイナンスシステムのFG」の成果と役割の関係を含め、2つの新しいFGの必要性、関係性について、米国や英国等から懸念が示される状況が続きました。

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RG議長団

 私のRG会合では、2つのFGの適用範囲の違いを明確にし、また、ブロックチェーンのFGに関しては、より広い概念となる分散型元帳技術(DLT:Digital Ledger Technology【注記2参照】)を対象とすることと、他の標準化機関(U4SSCISO TC 307等)との関連を明確化にし、2つのFGについて、ITU-Tで検討することが妥当である理由を補足するなど、それぞれのFG提案記述を追加修正しました。そして、まず2つのFGを独立のFGとして設立することをRGで合意しました。しかし、FGのタイトル名の原案への反対が米国、英国、スウェーデン、ドイツなどから示され、アラブとアフリカを中心とする多数を占める賛成派との対立が深くなりました。そこで議長から、午後のコーヒーブレイクを利用したアドホック会合での妥協案検討を指示し、FG提案記述内容の変更との整合化を図り、課題を外部により強くアピールするために、FGのタイトルを見直すこととしました。RGの合意結果として、以下の2つのFGがTSAGの管理の下で設立することを合意し、5月4日のプレナリーに報告し、TSAGとしての正式合意が実現しました。

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議論紛糾のアドホック会合模様

4)「ディジタル金融サービスに関するFG」の成果物移行

 「ディジタル金融サービスに関するFG」(FG-DFS:Focus Group on Digital Financial Services)が2016年12月に2年間の活動を終え、その成果は85の政策提言と28のテーマ別報告書を発行して作業を完了しました。これらの成果のうち、28件の報告書について、TSAGでFG報告書を関連するSG(SG2、SG3、SG12、SG16、SG17)に送付することで、今後、ディジタル金融サービスにおけるサービス定義、規制事項、ネットワーク要求条件、セキュリティ、相互接続性などのITU-Tにおける専門分野での勧告作成検討のフェーズに移行することを合意しました。

 今後は、規制当局、政策立案者、ディジタル金融サービス提供者および支払いシステム提供者がディジタル金融サービスの利用を増やすための主な分野、実行される取引量および市場競争、ディジタル金融サービスを提供し、銀行だけでなく非銀行による市場参入を可能にするオープンエコシステムを確立することを目指します。

 FG-DFSの成果は、2017年4月19日にワシントンDCで開催された世界銀行が主催する「デジタル金融サービスと金融包括」ワークショップで85の政策提言を発表しました。Bilel Jamoussi, Chief of the Study Groups Department of ITU's Telecommunication Standardization Bureau, highlighted that the timing of the Focus Group was perfect due to growing momentum of international efforts to provide policy guidance in relation to the pursuit of Financial Inclusion. 世界銀行グループの財務・市場グローバル・プラクティス担当ディレクター、セバスチャン・モリノス氏は、ITUのFGが実施した作業を高く評価し、85件の政策提言を歓迎すると表明しました。ディジタル技術は金融分野のさまざまな分野で革新の中心にあり、He added that new technologies had brought a whole new set of players into the financial services market going on to praise these new players for finding innovative ways to bring financial services to underserved communities.新しいテクノロジーが金融サービス市場に新たなプレーヤーをもたらすとコメントしています。今後さらに、ICT分野と金融サービス分野の専門家が集まり、ディジタル金融サービスに関連する機会とリスクについてさまざまな視点を交換し、財政的包摂の追求を支援する政策指針を提供するための国際的な連携が始まることが期待されます。 このブログを読んでいただいている皆様にも、FG-DFSの成果物である「85の政策提言と28のテーマ別報告書」に目を通していただければと思います。

5) その他の主なTSAG合意事項

 

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ジュネーブ市内の模様

 イースター(4月16日)も過ぎ、ジュネーブの春の爽やかな気候を期待していましたが、滞在期間中は雨が多く、気温は5度以下と冬の様子で、例年とは何か違う印象でした。それでも春は近づいており、ITU本部前の庭には花の咲く木がきれいでした。なお、この花の木の名前はジュネーブの友人に尋ねてみましたが今のところ分かっていません。
(※その後、読者の方からこの花が「ライラック」であることを教えていただきました。ありがとうございます)

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ITU本部前の庭の景色

 

【注記1】ディジタルフィアット通貨(DFC: Digital Fiat Currency): フィアット通貨とは、現在各国が使っている紙幣の法定通貨のことですが、ディジタル法定通貨は、このディジタル版で、ISO TC68 / SC7が通貨コードを割り当てるために使用する用語で、イングランド銀行が出版する白書で使われた「中央銀行発行のディジタル通貨」として定義されます。紙幣形式の通貨と同様に、ディジタル通貨もすべての市民が利用できなければならず、ディジタル金融サービスの相互運用性を促進する触媒として重要であり、 電気通信およびICTのネットワークインフラストラクチャーは、中央銀行のディジタル通貨の発行を高信頼で安全に支援することのできる最高のプラットフォームとなることが期待されています。


【注記2】分散型元帳技術(DLT):DLTはブロックチェーン技術や分散型データベース技術として知られ、オープンで分散した安全な元帳であり、関係するエンティティ間の全ての取引やオンライン活動を効率的かつ検証可能な方法で記録することができる技術で、経済、文化、社会を根本的に変える大きな可能性を秘めた革新的な技術と考えられています。 DLTは財務分散アプリケーションだけでなく、イベント、支払いトランザクションレコード、およびその他のレコード管理活動、アイデンティティ管理、トランザクション処理、およびデータ出所証明記録などに適していると言われています。

 


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