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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

ITU-T Review Committee会合速報:標準化戦略グループ新設を合意

 1月26日から2月7日までジュネーブのITU本部に出張しております。私が議長を務めるITU-Tのレビュー委員会(Review Committee:RevCom)TSAGTelecommunication Standardization Advisory Group)会合への対応のためです。今回のブログでは、1月28日と29日に開催された第6回RevCom会合結果を速報します。レビュー委員会の設立背景や目的を理解いただくためには以下のブログを参考にしていただければと思います。

第2回ITU-T「レビュー委員会」開催速報(2014年01月20日)

ジュネーブでのRevCom/TSAG会合速報(2014年06月23日)

RevCom/TSAG会合速報:IoTに関する新SG20設立(2015年06月08日)

 会合の詳細報告については、TTCの国際連携アドバイザリーグループや総務省の関連委員会での報告を参考にしていただければ思います。

 RevComは2012年のITU-T総会WTSA-12(世界電気通信標準化総会:World Telecommunication Standardization Assembly)において新設され、この4年間の検討結果は2016年10月に開催予定のWTSA-16会合に報告されます。また、RevComからTSAGに対して、毎回進捗報告と改革提案を行い、TSAGではITU-Tの組織運営と組織改革に向けた重要な決定が行われます。今回のTSAG会合は2月1日から5日まで開催されます。

 なお、WTSA-16の開催候補地については、まだ正式発表はありませんが、チュニジア政府から、チュニジアのハマメット(Yasmine Hammamet)で、10月24日から11月3日の期間においてのホスト提案がありました。近年の国際情勢と渡航安全への慎重な判断が必要な状況ですが、現在、全ITU加盟国に対してチュニジア開催に対する意見徴収を進めており、ITU加盟国の承認により開催地は決定されます。既に、ITU理事国メンバー(48国)による開催支持の承認を終え、加えて、2月15日までにその他の加盟国の意見を加え、全加盟国の過半数の開催支持が確認されれば、開催地は正式に確定する予定です。

 今回のRevComでの審議は7月の最終会合と10月のWTSA-16を控え、実質最終段階となります。今会合の主要案件は、いずれも日本からの提案が基の課題で、

  1. ITU-Tによる市場動向と技術動向を踏まえた標準化戦略の策定機能強化のための新機能:Standardization Strategy Functionの実現
  2. 次会期のSG再編に向けた既存組織の標準化活動の定量的再評価による既存組織体制の見直し
  3. 様々な標準化協力メカニズムの再整理

などで、以下の通り一応の合意の方向が得られ、議長として一安心です。

1) 標準化戦略に関するラポータグループの新設

 ITU-Tにおける標準化の戦略的連携機能を強化するために、TSAGにおける新規ラポータグループとして、RG-SS (Rapporteur Group on Standardization Strategy)を新設することを、RevComからTSAGに対して提言することを合意しました。ただ、この提言を受けてTSAGがどのようなRG-SSの体制を決定するかは課題であり、これからのTSAGでの議論が重要になります。

 RG-SSは最新の技術動向と市場動向を踏まえた標準化戦略を策定し、関連する標準化機関との連携方法を考慮した具体的な標準化活動の将来方針を示すための検討組織です。検討では、ICT業界における主要企業のCTO (Chief Technical Officer)の意見を取り入れるとともに、ITU-Tメンバー以外からのRG-SSへの参加を可能とし、幅広い意見を集められるようにします。急速な市場と技術の変化を捉えられるように、電子会議を活用し、開催頻度も多くし、タイムリーで迅速な検討を行うことが期待されています。

2) SG活動モニタリングによる既存組織の再評価

 RevComでは、ITU-TのSG(研究委員会)活動状況を把握できるように、それぞれの会合への参加者数や寄書数、成果物の数、作業計画の進捗状況などを自動でモニタリング分析できるデータベースの開発をTSB事務局に要望し、定期的に報告できるシステムが完成しました。

 活動モニタリングの統計データは各SGの運営管理に有益であることが認識されました。例えば、各SGでの勧告作成の作業計画毎に、勧告草案が存在し、草案検討が1年半以上滞っている課題(Stale Work Item;陳腐課題と呼ぶ)は無いか監視することにより、各SGでの課題計画の見直しを促進することができました。その結果、11個の全てのSGで陳腐課題数の削減を図ることができ、その中の7個のSGでは陳腐課題数のゼロ化を実現することが出来ました。また、SGの活動モニタリングを今後も定期的に継続することと、陳腐課題の事前警告をシステム化し、各SGに事前通知できるようにすることを合意しました。

 SGの具体的な再編検討はTSAGで検討されることになりますが、RevComは、TSAGでのSG再編検討に資するため、ハイレベルな再編の基本原則について、以下の7つの原則を合意しました。今後のWTSA-16に向けたSG再編での考え方はこれらの原則に基づき検証が行われます。

A: Optimized structure

B: Clear mandates

C: Enhanced coordination and cooperation

D: Cost-effectiveness and attractiveness

E: Efficient and productive working methods

F: Timely identification of standardization needs

G: Support for bridging the standardization gap

3) 様々な標準化協力メカニズムの再整理

 欧州CEPT(欧州郵便電気通信主管庁会議)を代表しドイツから、ITU-Tにおける円滑な標準化活動を進めるための様々な協力メカニズム(FGやJCAやGSIなど)を洗い出した一覧表が提示されました。これらの協力メカニズムを精査し、それぞれのメカニズムの現状把握を行うとともに、今後も必要なものと必要でないものを洗い出し、次回会合までに整理することとなりました。特に、CITS(Collaboration on ITS)は複数の機関との協力メカニズムとして、新たな作業方法としてのGCC(Global Cooperation and Collaboration)と呼ぶメカニズム作りが必要かどうかを検討することになりました。

4) 今後の予定

 次回のRevCom会合は、TSAG( 2016年7月18~22日)の直前の7月15日にジュネーブで開催の予定です。今会期の最終会合で、4年間のRevCom会合の検討成果をWTSA-16に報告するための提言を完成することが目的です。今後、RevCom議長としては、副議長とのマネジメントチームからなる編集グループを構成し、提言草案の準備を進めます。草案改訂版を6月上旬までにITU-Tメンバーに公開し、草案に対して各国の要望を反映できるように編集作業を進める予定です。

 最後に、写真はこの週末の土曜日にフェルネー村で開催された朝市の模様です。フェルネー村はフランスにあるのですが、フランスとスイスの国境近くに位置し、ジュネーブからの市内バスで20分ほどで行くことができます。物価の高いジュネーブからフランスの安くて豊富な食材を求めて、毎週土曜日はスイス領からの買い物客で大変に混雑します。

上の写真は、フェルネー村の入口で朝市の中心に位置します。

 ミモザの花を売るお店を見つけました。ミモザは3月頃に見頃の花ですが、今年は暖冬でしょうか。

 果物、生牡蠣、生ハムのお店で、彩りも豊かでローカルな農産物が得られ、おいしい昼食の食材になりました。