マエダブログ

マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

TTC/NICT共催セミナー「HEMS普及に向けた標準化について」

 暦の上では雨水(うすい)で、雪が雨に変わり、春一番が吹き始める季節となりました。TTCのある芝公園には雪は降っていませんが、公園の一角には梅の花が咲きはじめ、春の訪れが感じられるようになりました。

 TTCの次世代ホームネットワークシステム専門委員会では、ホームネットワークを活用したサービスを提供するための標準化プラットフォームの検討を行っており、スマートグリッドやスマートハウスを実現するために使用されるHEMS(Home Energy Management System)と住宅内機器を接続する標準インタフェースであるECHONET Lite規格との連携を推進しております。このHEMS普及に関連したホームネットワークを中心とする最新の標準化動向や今後の展望に関するセミナーを、TTCとNICTの共催で2月13日に開催し、多数の方にご参加いただきました。今回のブログでは、ECHONET Liteの話題を中心にセミナーの概要を紹介します。

 ECHONETとはEnergy Conservation and HOmecare NETworkの略語で、ECHONET Lite規格はスマートハウス・HEMSを支える日本発の通信プロトコルを目指しています。TTCでは、そのECHONET Lite規格をサポートする下位層通信インタフェースの標準化を進めています。

 今回のTTCセミナーは、次世代ホームネットワークシステム専門委員会委員長の山崎氏(NTT)、他のご尽力により実現しました。セミナーのプログラム構成を表1に示します。

委員長 山崎氏
委員長 山崎氏

 本セミナーは3部構成で、パート1は、エコネットコンソーシアムを中心に展開されているHEMS関連事業創出にむけた標準化活動について紹介しました。講師にはエコネットコンソーシアム関係者として、エコネットコンソーシアム専務理事の児玉氏、HEMS認証支援を推進する神奈川工科大学スマートハウスセンター長の一色先生、スマートメーターの制度検討を推進された慶応義塾大学の梅嶋先生をお招きしました。

児玉 氏
児玉 氏
一色 氏
一色 氏
梅嶋 氏
梅嶋 氏

 エコーネットコンソーシアムの設立は1997年と歴史は長く、次世代の設備系ホームネットワークの開発とIEC/ISOでの国際標準化を推進してきました。ここで対象とする標準インタフェースとは、電力会社が設置するスマートメーターと建物内のHEMS制御装置との間のルート(Bルートと呼びます)です。2011年にECHONET Lite規格が完成し、仕様が一般公開され、2012年2月には経済産業省がECHONET Lite をHEMS用の公知な標準インタフェースとして推奨しました。ECHONET Liteは伝送メディアに関してはトランスポートフリーとし、OSIレイヤの5~7層の通信処理部の規定に限定するとともに、通信アドレスはIPまたはMACアドレスとし、レイヤ4以下の下位通信層は他の標準化機関の仕様を活用します。

 スマートハウス・HEMSの普及拡大にはECHONET Lite相互接続の実証検証や教育が重要で、HEMS認証支援センターはECHONET Lite規格を用いた開発機器の認証支援や製品開発環境の提供、相互接続のための環境を提供しています。HEMS認証センターについてはURL: http://sh-center.org/にアクセスしてください。

 スマートメーターの制度面に関してはスマートメーター制度検討会が運用ガイドラインを規定しています。スマートメーターのBルートにおいて、HEMSに対して電力等使用情報を提供することは、「情報は電力会社等から需要家(ユーザ)に対して適正に提供されるべきものであり、需要家が第三者への提供も含めその利用を行うことができる」ことを意味しています。また「全ての電力会社は、HEMS設置等に伴いスマートメーターの設置を希望する需要家や、小売全面自由化後、小売電気事業者の切替を希望する需要家に対しては、スマートメーターへの交換を遅滞なく行うこと」が義務付けられ、スマートメーターは電力会社が設置することになります。一方、HEMSは、需要家もしくはHEMS販売事業者が設置することとなるため、HEMSとスマートメーターとの接続に当たっては業種を超えた連携が必要となります。このガイドラインは、スマートメーターBルートの通信が適切に運用されるよう、Bルート開通・運用においてスマートメーター側とHEMS側が共通で取り決めしておくべき事項を中心に記載したもので、低圧スマートメーターガイドラインについては下記から得られます。

 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/smart_house/pdf/006_s03_00.pdf このガイドラインでは、公知で標準的な通信方式としては、東京電力をはじめとする国内の10電力会社は主方式として920MHz帯無線(Wi-SUN方式(IP)を、環境条件などで設置が困難な場合の補完方式としてPLC(G3-PLC)を選定しています。

 上記で解説したように、Bルート通信プロトコルの第4層以下はエコーネットコンソーシアムとしては特に規定していません。ネットワーク層としてIPv4やIPv6を使っても良いし、MAC層・物理層としてイーサネットやBluetooth、IEEE802.11b/g/n、IEEE802.15.4などを使っても良いです。TTCでは、適用可能なホームネットワーク通信インタフェースの実装ガイドラインを規定しており、本セミナーのパート2では、TTCが制定する関連標準の概要を紹介しました。

 ECHONET Liteの下位層通信インタフェースに適用可能な物理媒体毎の実装ガイドライン(TR-1043)について、丹先生(北陸先端大学)に解説いただきました。その中から電力会社が選定した二つの推奨通信方式として、「920MHz帯無線のECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェース」について児島氏(NICT)に、「狭帯域PLC方式のECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェース」について酒井氏(日本TI)に解説いただきました。さらに、「HEMS下位層プロトコルに対応するセキュリティ機構」について次世代ホームネットワークシステム専門委員会副委員長の高呂氏(沖電気)、Bルート通信インタフェース実装詳細ガイドラインについて神田氏(東芝)、ホームネットワークを利用したサービスを実現するアーキテクチャに関する検討で「サービスプラットフォームにおけるカスタマサポート機能」について松倉氏(富士通)に解説を頂きました。

丹 氏
丹 氏
児島 氏
児島 氏
酒井 氏
酒井 氏
高呂 氏
高呂 氏
神田 氏
神田 氏
松倉 氏
松倉 氏

 最後に、本セミナーのパート3では、丹先生に再び登壇いただき、ホームネットワーク標準化の現状と今後の課題について整理を頂きました。ホームネットワークの議論は通信レイヤからシステムやサービスの上位レイヤに移行しつつあること、ホームネットワークのセキュリティとプライバシ―が今後の重要な課題であること、サービス開発の生産性向上を図るために抽象度の高いAPIの検討が必要であること、などの提言を頂きました。

 TTCでは、より多くの皆様に議論にご参加いただき、これからのスマートライフの構築に向けた検討を盛り上げていただければと思います。TTCへの入会に関心のある方はTTCのホームページをご覧ください。

表1;セミナープログラム 

時間
タイトル・講師
13:30-
13:35
開会挨拶:山崎 毅文氏(日本電信電話株式会社)
(次世代ホームネットワークシステム専門委員会 委員長)
Part 1
HEMS関連事業創出に向けた標準化活動の役割
13:35-
13:55
「エコーネットコンソーシアムの役割と今後の展開について」
児玉 久氏 (エコーネットコンソーシアム専務理事)
13:55-
14:15
「HEMS機器相互接続・認証の取り組み」            
一色 正男氏 (神奈川工科大学)
14:15-
14:35
「スマートメーターBルート活用による事業創出について」  
梅嶋 真樹氏 (慶應義塾大学)
14:35-
14:50
パネルディスカッション: 「TTCとの連携・期待について」 
モデレータ:山崎氏、 パネラー:児玉氏、一色氏、梅嶋氏
Part 2
本委員会での成果/制定した標準化文書の紹介
15:00-
15:15
「TR-1043: ホームネットワーク通信インタフェース実装ガイドライン」   
丹 康雄氏 (北陸先端科学技術大学院大学)
15:15-
15:30 
「JJ-300.10: ECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェース(IEEE802.15.4/4e/4g 920MHz帯無線)」  
児島 史秀 氏(NICT)
15:30-
15:45
「JJ-300.11: ECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェース (ITU-T G.9903 狭帯域OFDM PLC)」  
酒井 正充氏(日本TI株式会社)
15:45-
16:00
「TR-1051: HEMS下位層プロトコルに対応するセキュリティ機構」
高呂 賢治氏 (沖電気工業株式会社)
16:00-
16:15
「TR-1052: HEMS-スマートメーター(Bルート)通信インタフェース実装詳細ガイドライン」
神田 充氏 (株式会社東芝)
16:15-16:30
「TR-1053: サービスプラットフォームにおけるカスタマサポート機能」
松倉 隆一氏 (富士通株式会社)
Part 3
現在の活動状況と将来に向けての課題・提言
16:40-
17:00
次世代ホームネットワークシステム専門委員会における現在の活動と今後の方向性
丹 康雄氏 (北陸先端科学技術大学院大学)
 
閉会挨拶 前田 洋一(TTC 専務理事)
17:15~
意見交換会