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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

国際競争力強化のための標準化戦略セミナー開催

 梅の花も盛りを過ぎ、チューリップの新芽が地表に顔をだし、菜の花の黄色が鮮やか映えるようになりました。やっと春が来た、という実感がするこの頃ですが、皆様の地域ではいかがでしょうか。暦では21日は春分。そろそろ桜の開花宣言の情報が聞こえてきそうです。

 さて、先週の3月17日、TTCにおいて、約80名の参加者での「国際競争力強化のための標準化戦略セミナー」を開催しました。本セミナーは、総務省の「平成25年度 情報通信分野におけるITU-Tの標準化活動等に関する調査の請負」において、TTCが受託した調査結果の概要を報告するものです。本セミナーは、表1のプログラムで、講演会形式での報告を行いました。その中で、ICT分野の中小企業等の標準化ニーズ調査の公募に応募採用された皆様の最終報告会も含まれています。

 このセミナーの背景としては、2012年11月に、国際電気通信の標準化機関であるITU-Tの総会WTSA-12が開催されました。その総会で日本が提案したITU-Tにおける将来の国際標準化戦略とその検討体制等を議論する「レビュー委員会」の設置が承認されましたが、その議論においては、日本の国際標準化活動が適切に反映されるように取り組んでいかなければなりません。一方、我が国の標準化活動に関する課題として、情報通信審議会第18号答申「情報通信分野における標準化政策の在り方」において、ICT分野の中小企業等の標準化ニーズを把握し支援するための方策について検討していくことが重要である、と述べられています。

 これらの背景を踏まえ、TTCは平成25年度に、総務省の委託を受け、以下の三つの国際競争力強化に向けた課題に取り組みました。

第1課題: グローバル標準化機関であるITU-Tの国際標準化戦略とその検討体制等の改革に向けITU-Tの標準化活動の現状及びあるべき方向性について調査し、レビュー委員会への日本提案に反映。

第2課題: 標準化をグローバルビジネス展開のために活用する戦略として捉えてもらうため、人材育成の基礎となり、初めて標準化に関して学ぶ者が理解すべき、標準化の重要性や仕組み等、基礎的な事項をまとめた標準化教育テキストの作成。

第3課題: 日本でまだグローバル市場展開まで活かしきれていない、潜在的な技術やアイディアの発掘を活性させることを目的に、標準化活動に必ずしも詳しくないICT分野の中小企業等の標準化ニーズを把握し活動支援するための方策として、ICT分野における中小企業・大学等の標準化ニーズの把握調査。

 第1の「ITU-T標準化活動の在り方に関する調査」では、ITU-TにおけるSG(Study Group)やFG(Focus Group)等の活動状況を分析するとともに、関連する標準化機関の組織的特徴を分析し、ITU-Tの組織改革のあるべき姿について検討しました。各SGの活動評価指標としては、各SGが作成した勧告のダウンロード数、各SGでの勧告承認数、会合参加者数、寄書数、リエゾン文書数などが有益であることを提案しました。今後のITU-Tの組織改革の検討に日本の意見を反映するためには、本調査での情報収集と分析を継続し、レビュー委員会への提言に貢献して提案していくことが重要です。 

 第2の「標準化に関する教育テキストの作成」では、標準化の重要性や仕組みを体系的に理解できる基礎的なテキストの作成が目的であり、パワーポイントによるスライドだけでなくノートによる詳しい解説を付けたもので、自己学習はもとより、社内の研修や勉強会に活用できる教材を作成しました。今回の標準化テキストでは、標準化の意義、代表的な標準化機関の組織概要、標準化機関の相互協力・連携関係を中心に、標準化の世界を理解するのに役立つ知識を提供することを目的に編集しました。しかし、標準化活動はビジネス活動に生かすための戦略立案であり、今回のテキストに加えて、今後、標準化活動における寄書作成技術、標準化会議における交渉術、合意に至るための会議運営技術など経験とノウハウの伝承を行うための教材が必要です。さらに、eラーニングなどのマルチメディア技術を活用した教材の作成が期待されます。

 第3の「ICT分野の潜在的標準化ニーズの把握及び標準化活動に関する調査」では、ICT分野の潜在的な標準化ニーズを把握するため、受託者の公募により動向調査すべき標準化項目の提案を募集しました。公募に当たっては、ICT分野の中小企業を含む民間企業・研究機関・大学等に広く周知しました。公募の結果、非営利的な災害対策と障がい者への情報アクセシビリティという社会的課題について、共通の取決めの重要性や社会認知度の向上の観点での標準化の必要性が明らかになりました。また、昨年度からのフォロー案件である3D立体ディスプレイに関しての具体的な標準化を開始することができました。

 最後に、パネルディスカッションでは、本調査の取りまとめを行う検討会と三つの課題を担当した作業部会の主査及び委員に集まっていただき、本調査の今後の展開について議論いただき、標準化教育テキストの有用性を評価いただくとともに、本調査の継続の必要性を提言いただきました。教材形式としてはeラーニング化の重要性と内容のアップデートの仕組みが重要であることが認識されました。標準化戦略では、ITU-Tに対する欧米の戦略を踏まえた日本の標準化戦略の立案が重要であり、アジア諸国との連携を活用した展開についての提言をいただきました。また、標準化の新しい視点の発掘が重要であり、次世代の標準化活動とはどうあるべきかを戦略的な観点からも調査する必要性が提言されました。

 なお、標準化教育テキストについては、今後、TTCのホームページで公開できるように準備する計画ですが、標準化教育テキストの序章として、標準化の必要性と意義、その標準化の分類や体系、ビジネスにおける標準化の必要性を解説した第一章の概要について、eラーニング用のビデオを試作しましたので以下のURLにアクセスしてください。所要時間は約20分です。

標準化教育テキスト E Learnin
http://youtu.be/b2C0EcjXLFI

また、第3の公募に応募いただいた皆さんのインタビューを収録したビデオについては以下のURLにアクセスしてください。所要時間は約12分です。

標準化ニーズ調査対象企業インタビュー2014
http://youtu.be/ngTlNH60scY 

 本標準化教育テキストへのご意見、ご要望については、TTC事務局へお尋ねください。

表1.セミナープログラム

1 開会挨拶

深堀 道子 氏

総務省 情報通信国際戦略局通信規格課
国際情報分析官

 

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2 ITU-Tの標準化活動の在り方に関する調査

西門 岩全 氏

株式会社サイバー創研
取締役 調査研究事業部門長

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3 標準化教育テキストの作成

前田 洋一

一般社団法人情報通信技術委員会
専務理事

 

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4 ICT分野の潜在的標準化ニーズと標準化活動に関する調査の概要

森田 直孝 氏

NTTアドバンステクノロジ株式会社
主幹担当部長

 

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(1)「災害時における無線LANインフラ緊急開放手段」に関する調査報告

藤枝  俊輔 氏

東京大学 新領域創成科学研究科
助教

 

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(2)「手話キーボードならびに手話リレーサービス」に関する調査報告

大木 洵人 氏

株式会社シュアール
代表取締役

 

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(3) 「高臨場感3D立体ディスプレイ用情報転送」に関する調査報告

堀米 秀嘉 氏

合同会社3Dragons
代表社員

 

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5 情報通信分野におけるITU-Tの標準化活動等に関する調査総括パネルセッション

◆モデレータ

井上 友二 氏
株式会社トヨタIT開発センター 代表取締役会長、TTC顧問

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◆パネリスト

深堀 道子 氏
総務省 情報通信国際戦略局通信規格課 国際情報分析官

平松 幸男 氏
大阪工業大学大学院 教授

淺谷 耕一 氏
工学院大学 教授

今井 和雄 氏
国立情報学研究所 特任教授

真咲  なおこ氏
SHE KNOWS JOURNAL(株) 代表取締役 ジャーナリスト

前田 洋一
一般社団法人情報通信技術委員会 専務理事

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