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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

ITU-T議長・副議長の指導者研修に参加して

 日本では松の内も明けたばかりの1月10日と11日に、ITU-Tの新研究会期(2013年―2016年)の議長と副議長を対象とした指導者研修が、ジュネーブのITU本部で開催されました。この研修は、ITU-Tに期待される標準化会議の効率的、効果的、公平で、健全な議事運営と、これからの4年間の会合成果は、議長と副議長の手腕にかかっていると考えるITU-Tジョンソン局長の意向で前会期から始められたものです。本ブログでは、研修概要の報告を通じて、議長等の役職者に求められる基礎知識について紹介します。これらの基礎知識は役職者のみならず、会議参加者にとっても会議で戦う上で、強力な武器になるものと思います。

写真1 Fishman氏
写真1 Fishman氏

 今回の指導者育成研修の講師は、ITU-Tでの活動経験が豊富で、元TSAG議長のGary Fishman氏(写真1)が中心となり構成されました。また、その他に、ITU-Tの事務局幹部や一会期以上の議長経験者の講演で構成されました。Fishman氏は、昨年8月に、日本ITU協会とTTCで共同企画した「国際会議ハイレベル実践セミナ」の講師でもあります。

  このような国際標準化会議を対象とした研修は、ITU-Tでは2009-2012年研究会期にSG議長を対象に開催され、その後、ラポータとエディタを対象とした研修セミナとして実績を積んできていますが、日本では、日本ITU協会が古くから「国際会議体験セミナ」を実施しており(何年前かは記憶が定かではないですが、10年位か?)、Fishman氏も講師に招いたことがあり、彼の現在の講師経験にも影響を与えていると思います。また、このような研修をITU-Tでも開催するようになった背景としては、2000年のWTSAで議長と副議長の8年を最大とする任期制が導入され(WTSA-2000の会合報告参照)、ベテラン議長の多くが退任した2008年以降、役職者の交代の機会が増えたこと、また、日本、中国、韓国、さらに途上国からの役職者が増加したことから、役職者のスキル向上を図る必要が認識されたと考えられます。また、会議方法にペーパーレス化、寄書のウェブ自動投稿(Direct Posting)システムなどの電子会議方式が導入され、最新の会議ツールの使用方法を徹底する機会としても有効でしょう。

写真2 集合写真
写真2 集合写真

 受講対象者は、昨年11月に開催されたITU-T総会WTSA-12指名された研究委員会(SGTSAG等の議長・副議長です。私は、WTSA-12で新設されたレビュー委員会(Review Committee)の議長として、また、一会期以上の議長経験者によるセッションでの講師として参加しました。参加者は、WTSA-12で専任された約半数の議長と副議長で、新任だけでなく、一会期経験者を含む45名の参加がありました(写真2:集合写真)。日本からは私の他、内藤さん(SG16議長)、釼吉さん(SG11副議長)、高橋さん(SG12副議長)、後藤さん(SG13副議長)、荒木さん(SG15副議長)が参加されました。

写真3 開会式
写真3 開会式

 研修の開会にあたり、ジョンソン局長(写真3中央)からは、参加者に対して、研修プログラムへの参加歓迎とWTSA-12での議長と副議長の指名に対するお祝いが述べられました。また、ITU-Tのリーダーは、効率的で効果的な議事運営が重要であり、これからの4年間の成果は議長と副議長の手腕にかかっていること、役職者やITUのスタッフが一同に集まりお互いの人間関係を構築することで、今後の組織間の連携協力を深められること、議事運営の手法やノウハウを指導することでITU-Tでの作業の効率化を図り、役職者のチーム力が向上すること、WTSA-12では4名の新議長と50名の新副議長が任命されたが議長と副議長の出身国は35ヶ国に及び、そのうちの68%が開発途上国の出身者で占められることから、 彼らの貢献により、標準化格差の縮減(bridging the standardization gap)の検討促進が図られること、などの期待が述べられました。

  また、局長のお話の中の情報で、WTSAとWCITの結果報告の展開に関して、世界各地域の標準化組織と連携し、「WTSAとWCITに関する情報セッション」を企画する予定であり、アジアにおいては、3月7-8日に、バンコクでAPTとITUの協力イベント(APT-ITUセミナ)として開催されるとのことです。

  指導者研修のプログラムと教材は、ITU-Tのウェブサイトから入手できます。二日間の指導者研修を通じて、議長などの役職者として身に付けておくべき基礎知識としては、以下のものが挙げられます。それぞれ関連資料へのリンク情報も示しますので、今後の自己学習のご参考にしていただければと思います。

  1. ITU-T事務局TSB(Telecommunication Standardization Bureau)の組織構成
  2. ITU会議規則the Constitution, the Convention, the General Rules);ITU-Tのハイレベルな総会や各種会議の会議基本原則となるものであり、議長の権限や意思決定における手順を規定するものです。
  3. ITU-Tの作業方法;作業方法と手順を規定したものであり、基本となるWTSA決議1、ITU-TのSGの作業方法を規定する勧告A.1、ITU-Tのフォーカスグループの作業手順を規定する勧告A.7、ITU-T勧告の簡易承認手続きAAPを規定する勧告A.8が重要となります。
  4. 知的所有権IPR(Intellectual Property Rights)の基礎知識;標準化におけるIPRの位置づけとIPRに関するポリシーやガイドラインについて理解しておく必要があります。
  5. ITU-T関連作業データベース;ITU-Tの作業データは電子化、データベース化され、ウェブサイト上での検索が便利に行えるようになっています。
  6. FTPやネット会議など電子作業方法;ITU-Tの標準化作業の電子化により、電子メール、オンライン討議などのリモート参加が可能となり、作業の効率化が図れるようになっています。

  また、研修では、上記の知識習得だけではなく、勧告承認手続におけるいくつかのケースに応じて、議長としてどのような意思決定を行えば良いか、勧告承認手続におけるTAPAAPのケーススタディ学習も行い、実践力の習得に役立ちました。本ブログの皆さんがITU-Tの会議規則について自己学習をされ、ご不明な点がありましたら前田までお尋ねください。

  研修の最後には、局長から参加者に修了証書が贈呈され、二日間の研修を終了しました(写真4―写真8;SG11副議長の釼吉さんは参加されていましたが、写真の入手ができませんでした)。

写真4 内藤氏
写真4 内藤氏
 写真5 高橋氏
写真5 高橋氏
写真6 後藤氏
写真6 後藤氏
写真7 荒木氏
写真7 荒木氏
写真8 前田
写真8 前田

 研修を終えた1月14日からは早速、ITU-TのSG16会合が始まります。そして、1月22日からSG2、1月29日からSG5と、いよいよ本番が始まります。皆様のご健闘をお祈りします。