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マエダブログ TTC専務理事・前田洋一のTTCよもやま話

ITU標準化の役職者を目指す皆さんのための英語セミナのご案内

 ITUにおける標準化活動の活動成果の評価指針の一つとして、標準化組織におけるラポータやエディタ等の役職者を何人輩出しているか?という役職者人数を評価の尺度とする見方があります。役職者として責務を果たすためには、役職者が所属する会社がその業務に必要なリソースを提供支援してくれることが必要であり、また、役職者自身がその標準化関連技術分野での専門家であることと、公正中立な立場で標準化作成に寄与するボランティア精神に富んでいることが必要ではないかと思います。標準化組織とそれに関わる役職者の人数が、その標準化活動における国や会社レベルの関心度と貢献度、影響力を表す尺度となることは標準化の現場の視点からも正しいのではないかと思います。

  ITU-Tの研究委員会(SG:Study Group)や作業部会(WP:Working Party)の役職者には、SG議長/副議長、WP議長/副議長がいますが、実際の実務という観点から勧告作成をリードする役職者にはどのようなものがあるかご存知でしょうか?

  ひとつは、技術テーマごとに設定される課題グループ(ITU-TではQuestionと呼ぶ)の責任者で、課題グループ議長を務めるラポータ(Rapporteur)です。もう一つは、標準化仕様文書である勧告草案(Draft Recommendation)毎の草案作成責任者であり、仕様案の絞込みや仕様文書の編集の取りまとめを行うエディタ(Editor)です。

  このラポータとエディタの役職者数は、何名ぐらいいるのでしょう?

  ITU-Tの全SGで、ラポータとエディタの延べ人数の総計は、私の計数が正しければ、2011年12月末時点でそれぞれ264名と1,000名が登録されています。この中で、日本からの役職者はラポータが36名とエディタが132名です。国別の役職者数をグラフ1に示します。

  なお、今研究会期(2009年〜2012年)におけるラポータ以上の役職者としてご活躍の方については、総務省の以下のURL:

ITU-Tに関する情報は、
http://www.soumu.go.jp/main_content/000157285.pdf (ページ11参照)

ITU-Rに関する情報は、
http://www.soumu.go.jp/main_content/000157343.pdf (ページ09参照)

からご覧いただけます。

  日本の役職者数は、中国、韓国に次ぎ、米国とほぼ同様で、日本はITU-Tの標準化推進に大きく貢献している国と言うことができます。ただ、中国や韓国の存在が目立つようになってきたのは近年のことであり、特に、中国の急増ぶりは顕著です。

グラフ1: ITU-Tにおける国別ラポータ及びエディタの述べ人数(2011年12月時点)
グラフ1: ITU-Tにおける国別ラポータ及びエディタの述べ人数(2011年12月時点)

 このような状況の中で、ITU-Tの標準化議論の質を向上させるためには、英語力や国際会議運営能力の点で、中国、韓国そして日本からの役職者の質の更なる向上が期待されています。

  ラポータとエディタの役職を4年間の研究会期を1期か2期以上の経験を積んだ方は、標準化のハイレベルなマネジメントを行うSG議長やWP議長の候補者となることから、日本にとって標準化を積極的に推進するにあたっての貴重な人材となります。2012年11月はITU-Tの総会が開催され、2013年から新しい研究会期が始まる機会にあたり、新規の役職者候補を送り込むチャンスであり、標準化推進の強化を考慮した役職者人材の育成が望まれます。

  これらの人材育成には、実践(On the Job Training)が最も適していると思いますが、役職経験者から得られるノウハウの習得も有益であり、これから標準化の役職者を目指す若手活動者の育成に、少しでも貢献できるセミナを企画してみたいと考えていました。

  国際標準化会議に向けた英語力育成に関しては、日本ITU協会など色々な組織での試みがありますが、多くは初心者向けのスキルアップセミナ企画であり、標準化の実践力強化を意識した「ラポータとエディタに求められるスキルアップに焦点を当てた英語セミナ」の企画はあまり多くは見られないと思います。ITU-Tでは、昨年から専門講師と契約しラポータとエディタ向けのチュートリアルセミナを企画・実施していますが、ジュネーブで開催の標準化会議の前後で開催など、日本人にとっては、セミナのための外国出張は、時間も旅費も大きくかかることから、日本からの参加は経済的、効率的ではありません。

  そこで、英語セミナの実績をお持ちの日本ITU協会と相談し、協会が毎年行なっている一般向け国際会議体験セミナ企画に加え、新たに、国際標準化活動実務者向け「国際会議ハイレベル実践セミナ(以下、本セミナ)」を企画していただくことになりました。TTCとしては、標準化アップストリーム活動を推進するうえで重要なセミナであり、日本ITU協会の主催の本セミナを後援させていただくこととしました。

  セミナの講師については、ITU-Tが昨年から専門講師契約し、ラポータとエディタ向けのチュートリアルセミナを実施していることから、今回はITU-Tと同じ講師を日本にお招きすることとし、ITU-Tにおけるスキルアップセミナの契約講師で、元TSAG議長のGary Fishman氏に依頼することとしました。

  Fishman氏は、ITU-Tの企画として、ジュネーブやインド・プネなどでセミナ実施の実績経験をお持ちです。セミナの内容としては、標準化会議で遵守すべき会議規則、会議における役職者の役割と合意形成のためのテクニック、会議の進行方法と会合レポートのポイントなど、実践的な会議ノウハウの伝授を目指すものにする予定です。

  本セミナの開催日は8月28日と29日の二日間。TTCの会議室にて開催します。現役のラポータやエディタの方々のレベルアップのためだけではなく、標準化会議には参加しているがこれから役職を目指したい方々に参加いただければと思います。参加申し込みは、主催者である日本ITU協会のホームページでまもなく受け付けを開始する予定ですので、ご参加のご検討をお薦めします。