ICTと気候変動専門委員会 活動紹介

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委員長 端谷 隆文
(富士通㈱)
副委員長 中村 二朗
(日本電信電話㈱)

1  はじめに

  2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原発の事故以来、日本の原子力・エネルギー政策の行方は未だに定まっていない。また、GHG排出増加に伴う地球温暖化(気候変動)対策より、エネルギー問題解決へ向け、日本の政策はシフトしているように思える。

  一方、気候変動に関する政府間パネルIPCC第5次評価報告書、第1作業部会報告書(自然科学的根拠)が、2013年9月27日に公表され、地球温暖化は疑う余地がなく、20世紀半ば以降の人間活動が主な要因であった可能性が極めて高いと結論付けている。その兆候かどうかは不明だが、世界各地で異常気象(北米東海岸の大寒波、降水量の多かったイギリスなど)が頻繁しており、気候変動の脅威は年々増しているように思える。

  日本でも、2014年2月に、関東甲信の大雪は身近な異常気象として実感された方も多くいるのではないだろうか。気候変動がもたらす経済的打撃は大きく、最近では、気候変動は避けることができず、緩和策と同様、適応策に対しても多くの議論が、世界の関係機関で始まっている。 

2 ICTと気候変動の関わり

 ICTが気候変動に対してどう役立つのか?身近な例として、ICTを活用したE-Meetingを考えてみる。E-Meetingシステムがない場合、関係者は会議場所に移動し、時間と場所を共有しなくてはならない。そのために、飛行機、鉄道、自動車などで移動し、会議運営のための空調、照明などが必要となる。これらの活動には必ずエネルギーを消費し、結果としてGHG(CO2)を排出する。一方、E-Meetingシステムを利用すると、いつも働いている環境からPC一つで会議に参加できる。結果、移動のためや新たな会議室運営にかかるエネルギーは不要である。その分CO2排出を避けることができる。このように人の活動には、必ずCO2排出が付きまとう。ICTと気候変動の関係は、簡単に言うと、「ICT利活用により、従来モデルと比較し、より省エネで同じ目的を達し、その際、環境負荷(この場合、エネルギー消費に伴うGHG排出)を減らすことができるか否かを明らかにする関係」と言ってもよいのかもしれない。さて、上記の場合、果たして、E-Meetingシステムは、本当に環境負荷が小さいのだろうか? E-meetingシステムを開発、維持するにも人が関わっている。また、参加者は必ず、インターネット環境に接続し、PCを通じて参加しなければならない。PCの稼働、ネットワークを流れる情報量に応じた環境負荷も考慮する必要がある。また、顔と顔を合わせた実会議による効用も考慮に入れる必要もあるだろう。

2004年に主要な日本のICT企業が集まり、上述のような例示を多数分析し、

 「情報通信技術(ICT)の環境効率評価ガイドライン」として2005年に発表、さらに、2007年には、「IT社会で環境を測る -グリーンIT-」(産業環境管理協会 <2007/03>)を出版し、一般社会への普及をはかった。

3 ICTと気候変動専門委員会の設立背景

 2007年12月にITU-Tから「ICTと気候変動」に関する技術動向レポートが発行された。
http://www.itu.int/dms_pub/itu-t/oth/23/01/T23010000030002PDFE.pdf

 前項で述べた日本の活動を国際標準活動へインプットしていく目的で、2008年2月に、「ICTと気候変動に関するタスクフォース」が、TTC内に設立された。

 2008年4月京都シンポジウムにて、FG設立宣言が議長報告され、2008年9月にITU-Tにて「ICTと気候変動FG」が設立された。2009年3月広島シンポジウムでFGの総括、2009年4月のTSAGで正式に、SG5にWP3「ICTと気候変動」を設立、SG5も「環境と気候変動」に改名された。そのSG5/WP3にアップストリーム及び日本国内へダウンストリームしていく事を目的に、2009年4月にタスクフォースを改組、「ICTと気候変動専門委員会」が設立され、現在に至っている。

4 活動内容

 本委員会は、SG5(Environment and Climate change:環境と気候変動)、WP3(ICT and Climate Change:ICTと気候変動)の定期開催、ラポータ会合の活動に連動して随時開催し、寄書を提出、アップストリームおよびダウンストリーム活動を推進している。現在、SG5/WP3で検討されている課題を表1に、第一期(2009年~2012年) に発行された(計画含む)勧告を表2に示す。

 特に、L.1410とL.1200を国内標準としてそれぞれ、JT-L1410とJT-L1200にまとめた。

表1 SG5/WP3で検討されている課題

Q.13

Environmental impact reduction including e-waste

(e-wasteを含む環境影響の低減)

Q.14

Setting up a low cost sustainable telecommunication infrastructure for rural communications in developing countries
(発展途上国におけるルーラル通信のための低コストで持続可能な情報通信インフラの整備)

Q.15

ICTs and adaptation to the effects of climate change

(ICTと気候変動適応)

Q.16

Leveraging and enhancing the ICT Environmental Sustainability

(ICTによる環境持続可能性の活用と強化)

Q.17

Energy efficiency for the ICT sector and harmonization of environmental standards

(ICT分野のエネルギー効率及び環境に関する標準化活動の協調)

Q.18

Methodologies for the assessment of environmental impact of ICT

(ICTによる環境への影響評価手法)

Q.19

Power feeding systems(給電システム)

 

 表2 SG5/WP3で発行された(計画含む)勧告

勧告No.

勧告名

L.1010

 Green batteries solution for mobile phones and other hand-held information and communication technology devices

L.1100

 Procedure for recycling rare metals in information and communication technology goods

L.1101 (draft)

 Measurement methods to characterize rare metals in information and communication technology goods

L.1200

 Direct current power feeding interface up to 400 V at the input to telecommunication and ICT equipment

L.1201

 Architecture of power feeding systems of up to 400 VDC

L.1300

 Best practices for green data centres

L.1310

 Energy efficiency metrics and measurement methods for telecommunication equipment

L.1320 (draft)

 Energy efficiency metrics and measurement for power and cooling equipment for telecommunications and data centres

L.1340

 Informative values on the energy efficiency of telecommunication equipment

L.1400

 Overview and general principles of methodologies for assessing the environmental impact of information and communication technologies

L.1410

 Methodology for the assessment of the environmental impact of information and communication technology goods

L.1420

 Methodology for energy consumption and greenhouse gas emissions impact assessment of information and communication technologies in organizations

L.1430

 Methodology for assessment of the environmental impact of information and communication technology greenhouse gas and energy projects

L.1500 (draft)

 Framework for information and communication technologies (ICTs) and adaptation to the effects of climate change

 また、2013年1月のSG5会合で、テレフォニカとイタリアテレコムから提案されたFG-SSC(スマートサステナブルシティに関するフォーカスグループ:図1)が、2013年5月、TSAGにおいてSG5の下に設立が決まり、それに対応する国内委員会として、本委員会内にSWGを設置し、活動を開始した。

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図1 FG-SSCのWG構成

5 今後の活動

 EUのパイロットテストの結果を受け、ETSI(欧州電気通信標準化機構)と同一標準をめざし、L.1410(ICT製品、ネットワーク及びサービスの環境影響評価手法)の改定を進めている。今後、日本としてはこれらに対するアップストリーム活動と同時に、国内へのダウンストリーム活動を並行して進めていく必要がある。

 発展途上国の環境貢献に対するICTの可能性を検討するQ14、Q15は2011年に活動を開始した。また、Q18で検討されていた携帯電話のエコレーティングの標準化は新たなテーマ(Q16)として設定された。また2013年5月、TSAGにおいて、SG5配下にFG-SSCに加え、スマート水管理フォーカスグループ(FG-SWM)がエジプト及びウガンダの共同提案として設立が合意された。

 これらの全ての新規課題は、日本のICT企業の貢献が期待される分野であり、本委員会としても動向を把握し、積極的な関与を行う所存である。新たな企業の参加はいつでも歓迎であり、既存委員会メンバーのさらなるご支援・ご協力をお願いしたい。